13

転校してきた時と雰囲気が違うぞ


随分な言い様じゃないか。

「そうかなぁ」

心当たりが全くない訳じゃない。
寝てるときも起きていても、そういうおかしな景色が頭を埋める。そもそも一度顔を合わせた位の男とこうして話をするのは何か思うところがあったからだろう。
何か思い出せそうな気がするし、こいつらもそれを望んでるっぽい。
でも、

「よく分からないよ。それに、それを思い出して、この17年間の自分を捨てるようなことになったらと思うと───」

怖くて全て捨てたくなる。
法螺話かもしれない話に本当の思いなど言えなかった。

何より、彼らの思い通りになるのを拒む自分がいるのを、先ほど気付いてしまったから。


『どうしてさっき、僕がペットボトルを口にするのを止めたの?』
『……どこで聞いたのか、よく思い出してみろ』

『細かいことは、気にするな』


だから、思い出すことはしない。

「……そうか。まぁとにかく、気分が悪くなることがあるだろうから気を付けろよ」
「それだけ?」
「ああ。他に何かあるか?」
「いや……『早く思い出せよ』とか言うのかと」
「……何だ、俺のオカルト話信じたのか」

さっきまでは真剣な顔で前世とか記憶とかって言ってた顔が今はうっすらと笑みを浮かべている。この笑顔に安心を覚えるのも何か繋がりがあるのかな。

「ははっ、まぁそういうことにしとく」
「まぁ胡散臭い話はやめだ。今のお前の話を聞かせろ」
「聞かせろとは偉そうだな」

手の中にある甘酒はもうすっかり冷たくなっていて、ぐっと飲み干して思い付く限りの話を聞かせてやった。
七松に無理やり案内されたこの町の景色。この間見た変な鳴き声の犬のこと。もうすぐ綺麗に色付きそうな銀杏並木を見つけたこと。家族のこと。
それから、と言いかけて横の潮江の顔を伺う。

「……どうしたの、お腹痛い?」
「……いや、」

何かに耐えるように顔を歪めこちらをじっと見つめられては話すものも話せない。無意識に彼の脇腹をさするとひどく驚いて腕を掴まれた。たしかに不躾だったかもしれないがあまりに腕の力が強くて今度は私が驚いてしまう。

「……潮江、腕痛い」
「あ、悪い」

腕は解放されたもののその不安げな顔はまだこちらを向いたままで。突き放すように何か用と言えば黙ったまま顔を前へ背けた。

「……
「なに」
「今のお前は幸せか」
「……何で泣きそうな顔するんだよ」

立花や善法寺も中在家も食満もそんな顔をした。その度に私は少し意地悪な気持ちになって笑えさえしたのに、

「潮江、お前は泣くなよ」

幸せだよ。付け足すように答えた返事に彼はなんとか笑ってみせた。



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