七転びそのままで
「ありがとうー」
失念していた。
そういえばこの間右手が不自由なんだと聞いていたのについいつもの癖で投げてしまった。本人は何てことのないように拾うが、それがかえって申し訳ない。
どうやらの右手が不自由なのには私たちが関係しているらしい。
あいつが右手が上手く握れないと告白したとき、私と長次以外の者は顔を歪ませていたし、どうやら四人を手にかけた事が原因らしい。
「私は転落死、長次は毒殺だから知らないのも当然か」
「何不吉な言葉を並べてんだ七松……」
「ん?何でもない!」
「というかさ、七松は友人に連絡しなくていいの?黙って先帰っちゃったわけでしょ?」
「まぁ長次ならこのくらい気にしないだろ!」
「七松が待っていたのは中在家だったのか。不思議と彼なら怒るというより七松の下駄箱に靴がないのを確認してそのまま帰りそう」
「そう思うか?」
「うんそう思う」
「そうなんだ!長次そういう奴だ!」
の口から長次の名前が出ただけで私は嬉しかった。そういえば昔からそうだった。も長次も自分から口を開く性分ではなかったから、いつも私が間に入って三人で話をすることが多かった。誰か一人がいない時でも話題にでることが多かったくらい私たち三人は親しくやれていた。だからこそ
「が長次を殺したのが信じられなかったんだ」
「……なんの話?」
そんな物騒な、と笑っていたも私が口を結んでいるのを見て笑うのをやめた。大きな瞳で私の考えを見透かそうとじぃと見つめている。
「……まっ、細かいことは気にするな!」
「いい言葉だね、それ。もう一回言ってくれる?」
「気に入ったか?」
「うん。何かをね、思い出しそうな、懐かしい気持ちになるんだ」
「……」
ああなんでそんな顔をするんだ。が悲しみを隠すために笑う癖は昔のままじゃないか。今のは別人なんかじゃない。あの頃のままだ。
「まあ、何か悩むことがあれば私達のところへ来いよ!」
「“私達”って、この間の六人のこと?」
説明するまでもなかった言葉を問われて一瞬返答に間が空いてしまったからだろうか。はうーんと煮え切らない声をだし──
「私はあなたたちの中には入れない」
「──ッ」
それは、お前を、そして私を殺す呪いの言葉だ。
当時のお前が何よりも恐れていた言葉を私は知っていた。仲間だなんだと言いながら私達六人と一線引いていて、それを他者から指摘されることを恐れていたに、私はあえて言い放ったんだ。
勿論、長次を殺したお前を傷付けるために。
「なんで、そんなこと言うんだよ……」
「え、あぁ……何でだろう。さっきから、なんか変だね。ごめん」
苦しんでまで思い出すことはない。今を生きていれば過去の事なんて大したことないじゃないか。これはに向けた言葉か、自分のためかはもう分からない。
「細かいことは、気にするな」
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