「……」

仙蔵と長次の亡骸は、サクラタケ城と共に燃やした。
仙蔵の仕掛けた火薬はどうやら在学時代よりも相当進化していて、伝え火は城中を駆け巡り五日間にかけて城を燃やし続け二人の死体と共に姿を消した。
この一ヶ月の調べで知ったのだがサクラタケは、元々は穏健派な城であったらしい。それが城主が変わった途端一変。周囲の城を飲み込み戦ばかりを繰り広げる城となってしまったそうだ。
……つまり、仙蔵は、運がなかった。タイミング悪くもそんな城に就いてしまい、運悪く長次と再開し、運悪く友人を殺せと命じられ、運悪く私との約束を思い出し殺された。
運がなかったのは長次も同じだ。運悪く非人道的な城に目をつけられ、運悪く仲間に暗殺が命じられ、運悪く私が現れ運悪く私がイケナイ薬を持っていた。



そして私もまた運が悪かった。
仙蔵達を手に掛けた一年ほど前からざわざわと落ち着かない心を持て余し、夜の散歩に出たのが間違えだったと後悔するも後の祭り。

「なぁ、一つ聞いていいか?」
「嫌だ」
「長次と、あと仙蔵を殺したのはお前か?」
「……」
「……」
「そうだよ」
「じゃあもう一つ聞いていいか?」
「一つって言っただろう」
「私もお前を殺していいか?」

あぁあ、本当に運が悪い。

「ぐっ…!」

昔から、私の戦い方は七松小平太との相性が悪いと痛感していた。それが忍者としての現役を退いてのんびり畑仕事に勤しんでいた今じゃ尚更だ。サボらず定期的に体を動かしておくんだったと反省してる間も小平太は容赦なく攻撃を仕掛けてくる。

「考え事か?余裕だな」
「反省してただけ」

旋風のような蹴りが脇腹を狙う。一度でもまともに食らえばしばらくは立ち上がることもしんどいのを知っている。経験済みだよ悔しいことに。

「こんなことならもっと強く断っておくべきだった」
「何を?」
「『君たちの最期を看取ってやる』なんて約束をだよ。まさか小平太にまでとは。てんで裏切られた気分だなぁ」
「なはは、安心しろ。私はお前を殺しに来た側だ」
「それは有り難いけれど───」

勝機、唯一の勝機を見逃さない。小平太は一定数苦内を振り回した後必ず握り直す癖がある。まだ直ってなかったんだね。懐かしさを嬉しく感じながら、肩口に思い切り踵を入れる。自然に落ちる苦無を見る限りしばらく腕は使えないだろう。困惑からか動きの固まる小平太にもう一発お見舞いすると今度は膝をついた。話をするなら今しかない。

「……正直、あの二人が両方死ぬ必要はなかったよ。どちらかは、言いたくないけど無駄死にだ」
「最期を看取ったのだろう。何故そう思う?」
「仙蔵は、長次を殺したくないからと死を選んだ。それでも結局は長次も死んでしまったし、逆もまた然りでしょう」

情けないことに、この間一度も小平太の目を見られなかった。長次といい小平太といい、ろ組の殺気はあまりにも禍々しく恐ろしいのだ。

「長次だって、仙蔵が死んだと知ってわざわざ草葉の陰に入ることはなかった。長次は今でも腕の立つ男だったから、仙蔵以外の刺客なんともなかったはずだはずなのに」
「お前は、何を聞いていないのだな」
「え?」

その声にいつもの底抜けた明るさは含まれていなかった。



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