陸
最初から分かっていた。
は必ず私の、私たちの願いを聞き入れると。案の定彼女は仙蔵の願いを聞き入れここへ来た。
お前の家からこの地までは遠いのに、その上私の居場所を突き止めてみせた優秀なくの一は、持てる力全てを注いで望みを聞いてくれるのだろう。
「……本当に望むなら、お前の依頼を引き受けるよ」
渡された容器の中身は口にいれた途端止めるべきだと思わせるものだったが、それでも手は容器を傾けたまま全てを口に運ぶ。彼女が今どんな顔をしているか知らない。彼女が今どんな思いでいるか知らない。ただ視力を失い研ぎ澄まされた耳は弱々しく震える声を確かに拾った。
その間も、右手は容器を傾けたまま。
飲み干してみれば大した量はなかったのかもしれない。ただ毒と言うだけあって体は一瞬にして気だるさが襲い致し方無くも近くにある木へともたれ掛かり座り込んだ。地をおおうこれは銀杏だろうか。かさりかさりと軽い音が今の耳に心地よい。
息苦しくなる呼吸を必死に繋ぎとめているうち、枯れていたはずの目は突然涙をためた。
何故かは分からない。突然の事で頭は正常に働かず、ただ視界に広がる美しい黄色が眩しく目に張り付いていく。
「……どう、長次」
彼女の声はいつも耳に心地いい。柄にもなく混乱していた頭もその声を聞いて少しずつ落ち着きを取り戻した。なるほどその薬は、私にとってこの上ない最期を迎えさせてくれるらしい。
「嗚呼、綺麗な景色だ」
最期に見たのは、眩しく光る銀杏並木と
目に涙をためたの姿。
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