長き友も遂には滅びぬ
……」
「嫌だと言ったら?」
「……見ず知らずの者の手にかかるより、昔馴染みによってこの世を去る方がいいという私の我が儘だ。強くは言えない」
「長次は沢山の人を救ったんでしょ?殺されて終わる道理はないはずだ」
「だが在学中に殺めたのもまた事実。伊作も集いの時に言っていた。『必ず報いはくる』と」
「いや、酔ってて全然覚えてない」
「……そうか……」

あ、今のはすぐわかった軽蔑の眼差しだなこの野郎。



ひらり、ひらり。この静寂の中で唯一動き続ける色づいた葉も、長次の目には写らない。

「じゃあ逆に覚えてる?私への依頼両は安くないって」
「……あぁ、用意してある」

だいたいこちらの方角へ投げられた貫文は、びた銭とまではいかずとも、どれも質のいい銭とはいえないもので、長次が盲目であると改めて知らされた。

「……改めて言う。お前が手にかけてくれ」
「……死にたいの?」

私の質問に答えるでもなく口を閉ざし、どこを見るでもなく視線をさ迷わせた。その沈黙が答えであることは明らかなのだが。それでも私は懐からゆっくりと物を取り出す。覚悟を、決めるべきなのだろうか。

「……仙蔵がお前に頼んだのは、あいつは私を殺せるからだ。そうでなければ回りくどいことをせず私の元へ来る……今の私では殺すに容易い」
「勝手すぎるな。どうせ長次が死ぬのなら、殺してでも止めてくれと言った仙蔵は無駄死にじゃないか」
「……」

まただんまり。でも彼の目は発言を取り消そうとはしない。
今度の沈黙は長かった。いや、ただ長く感じただけかもしれない。空はまだ明るく舞い落ちる葉を綺麗に魅せていた。


「……本当に望むなら、お前の依頼を引き受けるよ」

懐から取り出した、冷たく無機質な瓶。私がこれを持っているのは、何もこの為ではなかったはず。

「これね。そう、私の手にある容器は、少し飲めば薬だが多量接種により死に至る。薬と言うよりはほぼ毒だ」

いる?と聞いてしまうのはあまりに意地が悪いだろうか。わざとらしく音を立てて投げてやるとそれを見事手に納めた。

「……世話になった」
「お互い様」

今日の長次は随分饒舌だ。それこそ、一生分喋ったんじゃないかというように。

「あぁあ。長次がその村にさえ行かなければこんなことにはならなかったのに」

我ながら意地の悪い問いかけに、ただ静かな声で「後悔はない」と答えた。強がりとは、言えそうにない様子で。


投げ渡した瓶を静かに傾ける。

「……っ」

中の液体は、少しずつ、でも確実に長次の喉を滑っていく。頭のどこかで、これを飲んだら長次を失うんだと諦める自分と、まだ間に合うと手に手裏剣を握る自分がいる。

でも、もう遅い。何もかも遅い。

長次は近くの木にもたれ掛かるよう腰かけて身体中の空気を外に吐き出した。

「……どう、長次」

此の時の顔は、きっと、純粋な。

「嗚呼、綺麗な景色だ」

口角をわずかにあげて、微笑んでいた。



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