前略

お前はあの時の約束を覚えているだろうか。そしてそれは有効だろうか。

当時は気にするななんだと言っていた私が忘れずにいてこうしてお前に頼っているなど実に片腹痛いばかりだが、僅かでも私を思う気持ちがあるのならこのまま読み続けていてほしい。

礼を言う。私は今サクラタケ城に仕えている。遠い城なので知らないのも無理はない。

さて、お前は長次が何をしているか知っているか?あいつは私たちと敵対したくないと見聞を広める旅にでている。しかしその実態は様々な城に情報を流すフリーの忍者、情報屋のような仕事をしているのだ。奴の正確な情報にはサクラタケ城も何度か世話になったが、それが仇になった。
切れすぎる刃はなんとやら。

私に、長次を殺せと命が下った。

もし長次がどこかの忍として仕えていたのなら私も鬼となり自らの手を汚したろう。しかし奴は忍ではない。我々が情報を提供しろと頼んでおきながら忍の末路を辿らせるなど私にはあまりにも荷が重い。笑えるだろう。我ながら情けないものだと自覚している。旧友を殺せないだけでなく、こうして手紙をしたためていることを。



もともとサクラタケ城は辞めるつもりだった。呉越同舟を絵に描いたような城で、私の寝首をかかんとする城に長居はできない。
私は城に大量の伝え火を仕掛け少しでも時間をかせぐつもりだ。これでどの道私の命は晴れて狙われる身となった。だからどうかサクラタケの連中に見つかるまでのその間に

私を殺してくれ。



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