24.強引

「ハァァ……」

喫煙所で頭を抱え煙を吐いたのは目の下に隈をこさえた唐沢だ。原因であるは喫煙室のドアの前でその顔を覗きこんでいる。

「大丈夫ですか唐沢さッ」
「だから、ドアを開けるなって」
「寂しいこと言わないでくださいよ久々に会ったんだから顔見てお話しましょ~」
「コラコラ」

唐沢がしばらく本部を離れている間にまた何かあったらしい。それでに電話をかけたのだが「直接話しましょう!」とどこから嗅ぎ付けたのか一直線にここまできた。……服にGPSでも付けられていたのだろうか。

「それで、何があったんだ」
「なんの話ですか?」

「………」

別に怒っているわけではない。しかしかわされてやるつもりもない。

「ここに戻ってから何回かあちこちで君の名前を耳にしたんだが、何か目立つ問題でも起こしたのか?」
「問題、は、起こしてないと思いますが、知り合いが知り合いを呼ぶというか、つい人と関わることが多くなっちゃって」
「なるほど」
「ダメですね。もう少し気をつけないと。ここでの私は──」
「別にいいんじゃないかな」
「……」

まだ半分残っていた煙草を灰皿へ落として喫煙室の外、の横へ立つ。スーツについた煙草の匂いに親しみを感じながら言葉の続きを待つに顔を向ける。

「トラブルを起こして困ったことになってるわけじゃないんだろう?ただの友人付き合いなら大切にすればいい」
「……でも」
「何も君から離れる事はないよ。それが君の気遣いからくるものなら」
「敵わないなぁ」

顔を下げたの肩を叩く。相変わらず小さい肩だ。その肩に、唐沢一人が肩代わりしたってまだ有り余る程の重荷を抱えているのだと、何故上層部は理解しないのだろうか。

「ま、矛盾するようだが問題は起こさないようにね」
「分かってますとも」

そんな唐沢との約束を、翌日にはもう破ってしまうことになるなんて。


   ***

慣れとは恐ろしいもので、がこの本部で恐れていた事への警戒心を薄れさせロビーへの滞在を長引かせた。
そういうときに限って恐れていた形になることは往々にしてあることだ。

「ようやく会えたな、
「……ッ、」

黒のロングコートに2本の弧月。飄々としてその心内を読ませない不気味な男、太刀川が声をかけた途端はあからさまに動揺し後ずさった。

「どうかしたのか」
「うるせぇよ……ごめん荒船隊員村上隊員、試合はやれない」
「大丈夫か、顔色が悪い……」

明らかに様子がおかしいからと手を伸ばす村上の手を叩き落としては大きく肩で息を吸った。
状況の説明を求め皆が北添を見るが、北添はあくまで“学校”の友人だ。出水と共に購買へ言った影浦が戻らないことには詳しい事は何も分からない。

「諏訪さんから聞いたぞ。お前、またトリガーを持つことにしたんだってな」
「……諏訪さんが、言ったの」
「いや、正確には盗み聞きだ」
「そう」
「なぁ、折角だから俺とも戦ろうぜ」
「嫌だ」

しばらく続く押し問答、折れたのはの方だった。大方、太刀川が引くわけがないと分かっていたのだろう。諦めた顔をして条件を提示していく。

「痛覚は四割以上入れて、勝負数は三本しょう───」
「五だ。いいよな」
「……じゃあそれで」

どうにか逃げようと思索するに気付いてか、その肩を抱いてブースへと入っていった。

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