23.照査

お好み焼き屋のトイレから出たは視界に飛び込んできた男を──正確には男達を──見て顔をしかめた。お前ら、ほんと、どこにでもいるのな。

「おーす!珍しいなここで会うのは!」
「俺なんてボーダー以外で見たのは初めてだわ」

なんの因果か、客として来ていた出水と米屋はあからさまに顔をしかめたままのにお構いなしで気さくに声をかけた。無視をして立ち去り席に戻ったところで、意図せずボーダー隊員の貸し切り状態になってしまった店では簡単に追いかけられてしまう。

「あ、影浦隊で来てたんスね」
「やぁ出水に米屋。───と、この三人と一緒なんて珍しいね」

そう言って北添が視線を向けたのは荒船隊の二人と村上の18歳トリオだ。心なしか荒船と穂刈はげっそりしている。

「偶然居合わせて捕まったんだ……」
「だいたい察したぜ」

そんな二人とは対照的に満ち足りた表情の出水たちは考え無しに無視を続けるに声をかける。

って影浦隊の人達とは接点あるのか?」
「いや、クラス同じだし。ボーダーだって知ったのはその後だよ。だからいいの」

ベチャッ。ひっくり返したお好み焼きは落下した勢いで多少形を悪くしたため絵馬がすかさずヘラで形を整えた。

「俺も同じクラスだ、特に接点はないが」

穂刈の発言には一瞥で済ませ、またすぐにお好み焼きに視線を落とす。絵馬と仁礼のアドバイスを受け歪なお好み焼きをどうにか蓋の中に収めていくところだ。

?」
「なに」
「聞こえてねぇのかと思って」
は人見知りなんだよね」

何も言わなくなったに代わり北添が助け船を出す。全く考えていなかったわけではないがここでボーダーの人間に声をかけられるのは誤算だった。

「何だよ、俺らは蚊帳の外か?」
「ぶっちゃけ、ただ同じくボーダーに所属してるってだけで馴れ馴れしく話しかけてくるなって思う」
「ハッ」

思わず吹き出した影浦も絵馬からの「事情を知ってるなら説明を」という視線を受けようやく口を開く。

「こいつはボーダーの人間が嫌いなんだ。別にお前らがどうって訳じゃねぇ」
「納得いかない説明どうも」

いつの間にか影浦母の気配りで隣の机に移動してきた五人には目もくれず鰹節をふわふわと踊らせる分厚いお好み焼きに箸をつけた。の作った汚い不格好なお好み焼きは仁礼によって影浦と北添の皿によそわれる。

「とはいえ、どうせチェックしてんだろ」
「あつ、うま……。まぁ、軟禁されて暇だったからね」
「で、どうなんだ」

箸を止めずに話続けた二人だったが、ここでようやくその手を止め顔を上げた。正面から見た顔を、村上はやはり見たことがあった。

「荒船隊員には『勝てない』。村上隊員には『負けない』かな」
「あー、だろうな」

またしても影浦と北添以外がおいてけぼりなわけだが、その頭に浮かんだ疑問符は後日解消されるだろうと言われてはもうお好み焼きを食べる他なかった。

「で。お前は明日ボーダーにいんのか」
「大人しくお好み焼き食ってろよ荒船隊員」

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