「嵐山さん、ありがとうございました」
「いや、俺は特に何もしていないよ」
「嵐山さんがいなければここまで来なかったと思いますから」
あのあと、話し合いは意外にもすんなりまとめられた。あの張り詰めた空気を破ったのは遅れて会議室から出てきた唐沢だ。唐沢が間に入ることでトリガー所有についての話し合いが平和的に解決したのだからこの男やはりただ者ではない。
先程まで暗い目で敵意を剥き出しにしていた
も彼の登場により安心したのか目に光が戻っている。
肝心のトリガーは木崎レイジが言っていた通り、破壊されることなくそのまま保存してあるらしい。トリガー保有についての取り決めは、
・防衛任務にはまだつかないこと
・自ら個人ランク戦を申し込まないこと(誘われた場合に受けることは可)
・他の隊員の混乱をさけるため目立つような行動は慎むこと
この三つ。
くれぐれも"戦い方"には気を付けること。そうやって念を押し忘れたことが後になって問題を起こすことを、この時の忍田は失念していた。
「色々と小言がつきましたが持てるならまぁ、良かったかな」
「そうか」
「じゃあ私は夕飯が待ってるのでここで」
よだれを拭いてからいけよと言われて慌てて口元を拭った彼女は前を歩く唐沢の元へパタパタと駆けていった。
「……忍田本部長、実際のところ何のためにまた彼女を呼び寄せたんですか」
「お前たちが不安に思うような理由はない。──とは言い切れないか。実際ブラックトリガーを渡すよう呼び出した」
「……!」
「それでも私は、今回のことは彼女への贖罪としてやっていくつもりだ」
「贖罪、ですか」
「あぁ。あの子はあぁ言ったが、ニ年前の出来事を、なかったことにはしたくないからな」
固く握った拳は怒っているのかと思った。しかしその表情は慚愧の念に堪えないとでも言いたげに歪められていて、嵐山はふと、先程の風間の表情を思い出した。
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