もちろん
はそんな朝食バトルが行われ、最終的にレイジが風間の肩を持つ形で終わった事を知るわけもなく、シャワーを浴び身支度を済ませたあと、朝から疲れた顔してるねと出水にいらん一言を浴びせるのだった。うるせぇよの一言に尽きる。
「
、お前は助手席に乗れ。家までの案内が必要だ」
「了解ですー」
車は軽い音を立ててドアを閉めると休日の朝には少し響きすぎるエンジン音を立てドライブへ向かった。
「次の次の交差点を左に曲がって、その先のY字路を右です」
手慣れたガイドをする前の座席とは対照的に後部座席に座る男子高校生二人は前のようにはいかない。今の烏丸は玉狛支部で出水は本部。同じ部隊いた頃ならいざ知らず、今は学校でも学年が違うためそう共通の話題もない。
無理して話題を探ることもないだろうと窓の外、普段はあまり通らない三門市の景色を眺めていた。本部から少し離れた三門市の端、こんなところがあったのかと思うほど普段は使わない道だった。
「車、ここに停めて大丈夫です」
案内された先はそこだけ浮いて見えるほど真っ白に塗られた3階建てのアパートで、駐輪場に乱雑に置かれた自転車やバイクを見る限り近所の大学へ通う学生のためのアパートだろう。
「アポなしで訪ねて他の人の迷惑にならないか?」
「大丈夫だよ、一人暮らしだし」
高校生で一人暮らしとは珍しいが三門市においては然程驚きはしなかった。一人になってしまったからこそ、わずかな縁を手放さぬようここに残る人は少なくない。
「持っていく衣類をまとめるので、三人はその棚にあるものを車に積んでてください」
指差した棚は数十冊の本やいくつかの小箱が詰められていた。なるほど確かに車でないと運ぶのは大変そうだ。
男三人で何周かしてようやく棚のものを全て車に移し終えた頃には段ボールを抱えた
が最後の一運びをしていた。
***
「唐沢さんに頼まれた事とは言えお手伝いどうもありがとうございましたぁ」
今朝までは殺風景だった部屋も家具を運び込めばそれなりに見える。
「午後の会議には本部に来るから、終わったら顔見せなさいって言ってましたよ」
「じゃあ行ってこようかな~。棚の組み立てお願いしまぁす」
「まだ手伝わせるのかよ!」
「下着は上から二段目にしまってね~」
良心と下心が葛藤する出水は「自分でやれ!」と走っていく
の背中に声をあげ、相変わらず無表情の烏丸にそっと肩を叩かれた。
さて、
に部屋の荷ほどきを任せられた二人はどうしたものかと部屋の前で立ち往生。かと思いきや
「こんなこともあろうかとさっきこの棚の写真を撮っておいて良かった」
「なんだ、俺はてっきりオンナノコの部屋の写メを撮ってるのかと思ったぜ」
玉狛で昼食を作るべく木崎が先に帰ったため男子高校生らしい話題を振る出水に目をくれず「違いますよ」とため息をついた。
「興味深い奴だとは思っても人として好きかと言われればそうでもないです」
「うわぁ、容赦ねぇな」
「品がある分小南先輩のがいい位ス」
「ま、何しでかしたらこんなとこに軟禁されるんだろうな」
さっさと片付けようと気が抜けていたのかもしれない。
丁重に新聞の巻かれた写真立てはフレームに光を反射させながら慌てる出水の手をすり抜け、落ちた先の床で割れてしまった。
「しまった…ッ!」
「ちょっと、何やってんスか」
「いや、まさか……イッテ…」
割れた破片が刺さり指からぷくりと血が流れるも、混乱した出水はそのまま素手で片付けを続け、新聞を持って来た烏丸に注意されていた。
「写真は無事みたい……ん、誰だろう」
「両親、か?」
「にしては若すぎませんか?どちらかといえば兄弟みたいな」
困ったように眉を下げながらも大きく開けた口を隠す女性と、この上なく楽しそうに女性をお姫様抱っこする男性。どちらも今の
より少し年上の若い男女が写っていた。
「自分が写ってない写真、か」
シャッターを押した側も同じように笑っていたのだろう。写真はほんの少しぶれていた。
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