本部に着くと、
は迅につれられ本部長達の集まる作戦室へと連れていかれた。また後で。そういって別れたのがおおよそ二時間前の事だ。待つのも飽きたと話している頃合いでようやく戻ってきたのは迅一人だけだった。
「
さんはどこ行ったんですか」
「さぁねぇ」
このあしらい方はもう聞き飽いた。表情には出ないがムッとした烏丸は珍しく迅に詰め寄る。
「どうせ知ってるんでしょ。どこ行ったのか教えてくださいよ」
「京介の言うとおり知ってるけど、今は一人にしてあげてよ」
「じゃあ、何の話をしてたのかは話してもらえますか」
「うぅん……食い下がるね京介」
そりゃそうだ。影浦や村上だって模擬戦をしながらとはいえ二時間も待っていたあげく何もないまま解散では納得いくわけがない。だが話せない事があることは分かっているためそう強く言えないだけだ。
「お前ら、
についてはどこまで知ってるんだ?」
「一昨日までただの同級生だと思ってました」
「一年ダブリやらボーダーだったとかは昨日知った」
「そうか。あぁ見えてあいつは二宮さんたちと同期の古株なんだよ」
ぼんち揚を頬張りながらのんきな迅に対して三人は面食らっている。
「知らなかったな」
「まぁB級にあがってすぐ父親のいる弓手町支部に転属したからお前らは接点ないかもな」
意外と古株であった事にも驚きだが、それより誰も覚えていないことが驚きだ。あの頃は今よりも正隊員が少なかったためある程度の実力があればすぐに噂が広まったはずだがそれがない。つまり
にボーダー隊員としての実績はないということだろうか。ランク戦を楽しみにしていたばかりに少しがっかりした。
「本人のいないところでペラペラ話さないでくれますー?」
「落ち着いたか?」という迅の問いかけにはまるで無視して、遅ェと文句垂れる影浦に笑いかける。
「あのヤクザ野郎お説教が長いんだよ」
「誰それ」
「もしかして城戸さん?」
「とんでもないこと言いますね。ところで説教って何かしたんスか」
「……出禁食らってから、ずーっと姿くらませてたことかな?」
やり方は違えど、やってる事は迅と同じ。答えたくないことは然り気無くかわす。きっとこれ以上問い詰めたって望んだ答えは返ってこないから烏丸はふーんと納得したふりをした。
「じゃあ帰るか。お前はどうする?」
「どーする、って私に選択肢ないでしょ」
「おや、ここで会うのは数年ぶりだね」
迅の後ろをついていく
に声をかけたのは意外な人物だった。
「唐沢さんっ!」
先程までただつまらなそうな顔をしていた
が打って代わって、まだ誰も見ていない子供のような表情でその人の元へ駆け寄っていった。
「先程まで会議室にいたんだろ?間に合わなくてすまない」
「わざと唐沢さんがいない時にやったんですよ、きっと。だから気にしないでください」
「それはありがとう。ところで
、制服はどうした?」
「破けたので捨てました。大丈夫です、もう19なんで」
「また喧嘩したのか?あと、19でも三年生なのは分かってるんだからね」
嘘はつかずにやり過ごす術は唐沢から学んだものだから、流石に師匠には通じない。
そんな二人のやり取りを退屈そうに見ていた四人だったが、唐沢が
の肩に顔を寄せたのを見て誰からともなく「あ」と声が漏れた。
「それに君……“これ”は止めろって言ったよな」
「違うんです本当に久々なんです城戸一派の仕打ちにイラついてついうっかり普段はしてません」
何のことだかさっぱりだがとにかく蚊帳の外であるのは面白くないからと近寄った烏丸を見て唐沢は営業スマイルを浮かべた。
「やぁ、君は林藤支部長のところの」
「烏丸です。二人はお知り合いだったんですか」
「まぁね」
「私の父っす」
第二の、と付け足したのは笑顔のまま彼女の頭に拳骨を食らわせたからだ。「ものすごく痛い」という抗議も「ラグビーやってたからね」というお決まりの台詞で片付けられる。
「どうせ夕飯は食べていくんだろ、先に店行って予約して来なさい」
「やったぁ!」
「くれぐれも屋上に行くんじゃないよ」
念を押されては素直に従うほかない。わざとらしく敬礼をしてエレベーターの方へ消えていった。
「……さて。君たちが彼女をここへ連れてきたんだね」
おかげで久しぶりに顔を見られたよ、という割りには浮かない顔をしている。迅は何も分かっていない三人を庇うように言葉を返す。
「京介が同じバイト先らしくて。その話を聞いた宇佐美が会いたがったんです。二人は元々学校の友人らしくって、それで呼ばれてるからって連れてきた。そんだけです」
「そうか。なら、君たちはみんな“ボーダー外”の友人なんだね」
「まぁ
がボーダー隊員って事は知らなかったので、そうなりますね」
「どういう意味ですか?」
「まぁ、たいした意味はないよ。
待たせてるみたいだし、そろそろ行った方がいいんじゃないですか?」
「そうだね。なんなら君たちも来るかい?彼女に会わせてくれたお礼だ。ご馳走するよ」
高校生は基本的にご馳走する、という言葉に弱い。「風間さん達との先約があるから」と断る迅以外はみんな目を輝かせて後ろを着いていった。
***
「あぁ、やっぱりお前らも来たんだぁ」
店のソファーで足を揺らし彼らの到着を待っていた
は妙ににやにやとした顔で出迎えた。
「名前書いといてくれたか」
「もちろん~」
「お待たせしましたぁ五名でお待ちの
様ー」
「はぁい」
可愛らしいウェイトレスに誘導された席は禁煙席で、可愛らしい振りをする
は唐沢を見て勝ち誇った顔をした。
「お前、禁煙席にしたのか」
「えぇ。だって私たち高校生ですから喫煙席は座れませんよぉ」
「確かにそうだがその勝ち誇った顔は先ほどの拳骨へのお返しにしか思えなくてね」
「何のことですかー?それに煙草は体によくないですよ」
バイト先でも、学校でも見せない楽しげな表情に複雑な思いを抱える。が、数分もしないうちに運ばれる鉄板を前にしてそんなものは簡単に吹き飛ぶのだった。
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