04.連行

「なぁ、お前が19ってのはマジなのか」
「やあっと信じたかね」

そんなことを聞くためにわざわざ席を立ったのかねと、ふざけた物言いとは別にその顔は心底つまらなそうだ。

「高校でダブりって何したんだ」
「出席回数を上回る欠席と暴力沙汰を起こせばお前らももれなくもう一回三年生遊べるドン」

某リズムゲームのものまねをしたが村上には通じなかったのか困惑した顔でと影浦の顔を交互に見る。影浦は全くの無視だ。

「ところでなんで急に信じるようになったの」
「烏丸たちに聞いたんだよ」
「からすま?そんな友人いないん───あぁ……」

何かに気付いたのだろうがもう遅い。本日学校に来た時点での運命は決まっていたのだということは迅のサイドエフェクトが告げるまでもない。

「ちょっとお腹痛いから早退しようかな」
「そう来るかと思って正門前で迅さんが待機しているそうだ」
「実力派ニートが…ッ!」

へこむんじゃないかってくらい机は力強く叩きつけられる。その音に二人だけでなく少し離れたところで様子を見ていた穂刈も顔を向けた。村上から事情を聞いていた荒船と穂刈もについて関心があったから、今日の本部には顔を出そうと決めていた。


   ***

「やぁ!久しぶりだなぁ!」
「……久しぶりって言うほど、関わったことないよね。父はだいぶ世話になったようだけど」
「そうだったか?まぁ何にせよ、本部に来てくれ」

来てくれ、なんてお願い口調だがその実これは命令だ。こういう態度がなんとなく気にくわないのだが、そんなの迅は気にしちゃいない。

「はいはいチート様。もうお前あれよ。そんだけ強いんだから一人で支部いけるって。立てよう。できるだけ三門市から離れたところで」
って俺に辛辣だよねぇあんま関わったことないのに」
「お互い支部者だしね。父からも『立派な人だ』くらいしか聞いたことないけど」
「お父さんが立派な人だって言うんだからもう少し敬意をはらってみない?」

二人の騒がしいやり取りだけで人目を引くのに、そこにもっさりしたイケメンまで合流すれば校門前にたまる五人の男───勿論は女だが某事情より制服を失ったので特例でジャージ登校が黙認されている───はかなり目立つ。空気を読んだ村上とが本部へ行くのを促さなければちょっとした人だかりができていただろう。
皆自分の顔面偏差値の高さを自覚してほしいと怒るに迅は得意気な顔を浮かべた。

先輩」
「からすまる。君だろ、こいつらに情報横流ししたのは」
「なんというか流れっすね。それより、バイトやめたんですか」

ボーダーの話をして以来バイト先での姿を見なくなったのは僅かながらに自分のせいではという罪悪感のようなものがあり、どうしても聞いておきたかった。

「やめてないよ。確かに君の事は避けてたから、君が掛け持ち先に言ってる日とか、あと昼間とかに入ってる」
「そんなんだから出席日数足りなくなるんだろ」
「うるさい」

賑やかさを見せる高校生達の後ろで、なんとも言いがたい薄ら笑いを浮かべる迅はこれから起きるであろう未来に憂いの色を浮かべていた。
どの未来も十分に起こりうるもので、どこに進もうとただ明るいだけの未来はない。
彼女にとってボーダー本部に行くことは玉手箱を開けるのと同じだ。この数年で良くも悪くも変わった環境の中で、彼女の感じる孤独とか悲しみとか、そういうのが少しでも少ない未来を選んであげられたら。
前を歩く彼女はこれからの事をまだ何も知らない。

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