ぱったりと。
バイトの休憩室で烏丸が
を見ることはなくなった。彼女はぱったりと姿を消したのだ。
「詰め寄りすぎたか……」
この事を宇佐美に話すと「彼女らしいね~」と困り笑いを浮かべていた。そういう人物なのか。あまり物事に深い関心を示さない性分のため、見失ったのならそこまでだ。去るものを追わず。変わったボーダー隊員だとは思うが、しかしそれだけだ。
しかし返って熱をあげる人物が宇佐美だった。
「折角尻尾を掴んだんだから見つけなくてはっ」
「ほう、しおりちゃんがそんなに真剣になるとは、俺も気になるな」
そこに空閑が興味をしめしたため、必然的に玉狛第二も捜索に参戦することとなった。
「そう簡単に足取りは掴めないと思うぞ」
木崎の言葉は頑張ろうコールに揉み消された。
***
「ほらみろ、やっぱり
だぜ」
「それはこっちの台詞だよ、もう見飽きたよお前らの顔なんか」
貶し合う補習室。当真と影浦は成績不振やらボーダー活動による出席日数の不足。もう片方は純粋に「高校とはいえこの成績で単位やるのは」という事でクラスは違えど3人仲良く補習常連組だ。
「ばかお前、こっちは『可愛い子もいるから補習おいで』って言われて来たらいるのお前だぞ、がっかりもするわ」
「いるだろここに可愛い子」
「「いねぇよ」」
「声揃えんなよ……」
益体もない会話をしているこの間誰一人シャーペンは動いていない。提出したものから帰宅せよと黒板に書かれているので、このままでは三人ともこの教室で一泊するのだろう。
「思い出した。今日は白チビとヤリ合う約束してんだ。こんなとこで足止めくらってる場合じゃねぇ」
「喧嘩ならバレないようにやれよー」
「あ?お前と一緒にすんな。ボーダーのだよ」
「やれやれ、アタッカー諸君は練習熱心だねぇ俺はスナイパーで良かったよ」
影浦がようやくシャーペンを紙に向けた。時計を見てまだ間に合うと言いながら動かしていく。当真と違い出席日数の不足で呼ばれているためその気になれば解くのは早かった。
「そっちね。当真もボーダーなの?」
「おぉ、そうだな」
「ふーん」
「……」
未だペンを揺らして白紙のままの当真の言葉に影浦も小さく相づちをうつ。話を振った
本人はふーんと興味無さげな返事をしてペンを回した。空は少し暗くなる。
***
「悪い、遅くなった」
「お、きたな影浦先輩」
「影浦先輩、俺らも混ざっていいスか?」
「俺に聞くな」
米屋と出水の質問に対してぶっきらぼうな返事をしたが、近くにいた村上が二人の参加を歓迎したため、喜々としてトリガーを振り回した。
「あれ?なんかクソガキ様も一緒にいねぇ?」
「うむ。しおりちゃんが張り切ってるからな。その手伝いだ」
栞が?何を頑張っているのか。聞き出そうと米屋が陽太郎を担ぎ上げたとき、背後に立った烏丸が二人へ質問を投げ掛ける。
「まぁ知らないとは思いますが、お二人は
って人ご存じですか」
米屋は首を横に振る。名字を聞いてもピンとくる人物はいなかった。それに対し影浦と村上は心当たりがあるように見合わせるが、二人が口を開く前に出水が苦い顔をする。
「俺そいつ知ってる!」
「えぇ、お前の知り合いなの?」
のんきな米屋の言葉に出水は力強く首を横に振った。
「違う。あいつとは前に喧嘩をしたりとかそういう縁だ。京介が知り合いだとは思わなかった」
「いえ。まぁ俺もよく分からないんスけど、宇佐美先輩が必死に探してて」
「探してるって?もしかしたらそいつ、俺らのクラスメイトかもしれない」
村上が冗談を言うとは思えないからこそ烏丸の思考は一時停止し、言葉に詰まる。
「いや、でもそれ別人スね。あの人19歳らしいんで」
「じゃあ別人だな」
「あぁ、あいつの場合“自称19歳”だしよ」
うんうんと自己完結させた高校生三人組にやれやれとため息をついた陽太郎は決めての一言を投下する。
「その
は少し髪の伸びた女版カザマみたいだったか?」
「あぁ?」
「まぁ……そうだ、な?」
雷神丸は駆けた。その背中に陽太郎を乗せて、宇佐美のもとへ。
「しおりちゃん見つかったぞ~!」
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