「仙人の千年、蜉蝣の一時」と言うのに
最初の依頼人は意外や意外。立花仙蔵だった。
「君は関係ないと思っていたよ。どちらかと言うと一人でこっそり死んでそうなイメージ」
「猫か私は」
ずっと不細工な顔をしていた仙蔵がこの時ようやく笑ったのだ。うん、やっぱり最後は笑顔を残しておきたい。
ずっと言わなかったけど、私は仙蔵の笑顔はとても綺麗だと思っている。折角の機会だと告げてやれば目を丸くしてクスリと笑った。綺麗な笑顔だ。
「まさかお前がそんな風に思っていたとは知らなかったな」
「言ってないもの。知るわけがない」
「というよりお前に何かを愛でる気持ちがあることすら知らなかったぞ」
別に綺麗と言っただけで愛でてるつもりはないのに、相変わらずの自信家だ。
相変わらず。良い言葉だ。
変わらない物と変わってしまうもの。
自分は今から変えなければならない。
悟られぬよう肺いっぱいに息を吸うと情けなくも喉が震えた。
「あの時も仙蔵は興味無さげに私の食べこぼしを掃除してたしさ」
「お前やっぱりあれわざとやっていたのだなくそ野郎」
懐かしいやり取りに思わずくつくつと笑みが零れる。
あと少し、あと少しだけだから、少しでも多く笑いあっていたい。
「あぁあ、なんであの時こんな約束引き受けちゃったんだろう」
「まったくだな」
「仙蔵、一度は気にするなって止めてくれたのにね。あの時にちゃんと断っておけば良かった」
「……あぁ、お前のためにはそうするべきだった」
初めて見たよ、眉を下げて笑うなんて。
「……なんだか、ぽかぽかコンビに毒されたような笑顔だな」
馬鹿を言えと否定するけど、やっぱりあの二人からの影響は少なからず受けてるよ。仙蔵。だって昔のお前なら、同じ釜の飯を食った仲だろうと、問題なく殺せた筈だろう?
「さぁ、そろそろ仕舞いだ」
「それ仙蔵が言う台詞じゃないでしょう」
心臓が、ドクドクドクドク。
「そろそろ嗅ぎ付けた奴等がやって来る。そうすればお前とて無傷では済まないだろう」
「敵の忍何人に囲まれようと怖くはないよ」
どんどん喉まで込み上げるドクドクドクドク。
「随分強気だな。敵を侮るとは忍者の三病にかかったか」
「そうじゃないさ、敵の忍に襲われるより怖いものがあるってこと」
「お前が怖がるとは面白い。この際だ、ぜひお聞かせ願おう」
目頭が熱い、喉が痛い。息苦しい程に、ドクドクドクドク───……
「お前を殺すこと。」
「───……あんな約束、引き受けなきゃよかった。」
こぼした言葉に、仙蔵はもう何も言ってくれない。
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