東から来た二人の負った怪我に比べれば、忍術学園在籍の六人など軽傷と言わざるを得なかった。勿論左腕に刺し傷を負った留三郎や弓矢が腹をかすめた小平太を含めても、だ。
学園長は「死者が出なくてよかった」と出迎えたのだから、改めて今回の任務が危険なものだったかを知る。
「結局、今回の任務ではお前らを盾にした形になってしまった……」
膝の上で握り締める拳は悔しさからか震えていて、そんな弱みを楽し気に笑いながら男はにたりと口を開く。
「やっっと気付いたのかァ?こんなぬるま湯で頭張ったって使い物になるかは別問題だ」
「……」
「…あぁ?なんだよいつもの噛みつきはどうした、太刀川」
「立花だ」
文句を言おうと睨みつけた先、顔の半分が隠れるほどの包帯を巻いた男を見れば毒されて言葉も出なくなってしまう。率先して前へ出るこの男がいなければ、別の誰かがこうなっていた。級友でなくてよかった、どこかでそう安堵している自分にほとほと嫌気がさすが、忍が片目を失うなんて致命傷、六年間共にした友人が負うと考えるだけでも背筋が冷える。
そんな仙蔵の心情を読み取るようには鼻で笑って、布団の上に片肘ついておい、と呼びかけた。
「しけた面すんなよ。俺ともあろうもんが片目潰れたくらいでどうにかなるとでも?」
「……」
「なんならこの間みたいに遊んで確かめてやろうか?」
にやにやと楽し気に笑うその顔に、六人がかりで挑み無残にも敗北という形に終わったあの日を思い出し眉を寄せる。そんな顔が更に彼を楽しませると分かっていても普段の冷静な顔が取り繕えない。間に挟まれていた与四郎がいい加減にしろ、と声をあげたところで障子ががらりと開き、外に漏れる声にうんざりした様子の二人が入ってきた。
「怪我人は大人しくしていてくれないと困るよ」
「伊作ぅ、薬木ここでいいのか?」
「ありがとう」
道具を抱えて入ってきた二人を一瞥しはぐるりと体を反転させる。背を向ける形になった彼に調子はどうかと声をかけるが当然返事はない。
伊作の制止を振り切ってしつこく呼び掛ける小平太に観念したのか顔を背けたまま返事をした。
「あのとき私達を脅したのはわざとだろう」
「……何の事だか」
「『殺しかねないから、去ね』と言った」
あれは自分達を庇うためのものではないのかと、付け加える前に鼻で笑われ言葉を遮る。
「お前は俺を『善人』に仕立てあげたいのか?」
「は?」
「あん時の俺は殺せるなら本当に誰でもよかった。ただ任務があるからな。俺がテメェらを避けて暴れるよかテメェらが去ったほうが早いからあぁ言ったんだなんの他意もねぇ」
顔を覆う包帯が邪魔をするのか、口の動きを最小限に抑えて片方になった鋭い目を更に険しくする。
「そんなクソどーでもいいこと言うくらいなら『わざわざ遠くから持ってきてやった』と恩着せがましく言った方が良かったぜ」
小平太の運んできた薬木がこの辺りの山に生えていないことをは知っていた。この辺りだと裏裏裏山くらいにしか生えていないのだ。わざわざ学外の二人のために切ってきたということはが口にするまでおくびにも出さなかったのだが、まさか向こうから言われるとは。
「どこまでも生ぬるいやつらだぜ」
包帯の上から左目を押すと、ぐちゅと生々しい音をたてるから全く関係ない伊作が目を押さえて痛がった。それを楽しむ姿は皆が知るそのもので、小平太があの戦場で見た殺意だけで動く獣はどこにも見当たらない。
「あんまいじくんでねーよ」
「あ?今更だろ。どーせもう見えねぇよ」
ニッタリ笑って指を差し込もうとしたところを、とうとう耐えかねた医務室の主によって強制的に眠らされた。
情も友も不要の物 後│>>
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