「おぉ留三郎!いさしかぶり!」
「お前、 錫高野与四郎か! お前もこの任務に参加してたんだな、安心した……」
「ん?何が安心したんだ?」
「いや、合同任務というのに東からの参加者があの男だけではたまったもんじゃない」
「あぁ!のことか!あいつば推薦したのは俺だーよ」
「何!?」
思いもしなかった言葉に驚く留三郎に彼は説明した。
あれほど忍者として確立した者はなかなかいないこと。
忍術学園にはいない人種であること。
そんな彼と出会わせるため、学園長が了承したこと。
「つまり学園長先生はあいつの人格を理解したうえで俺達と……」
「んだ。お前らはまだまだ甘いとこさあるしな!あいつさ見て勉強すんべ」
風魔学校の教師と肩を並べる程の実力者だ。そんな彼が言うのだからやはりあの男もそれなりの実力者かもしれない。
「んじゃ、気を付けろよ留三郎」
「あぁ、お前もな」
作戦実行日まであと五日。
***
「今回、私と錫高野与四郎が考えた作戦はこうだ。私と長次が一足先に城へ行き、侵入経路の確保、及びやつらの兵力を削いでいく。作戦当日になったらお前らが動け」
「私は何をするんだ?」
「小平太、伊作、 与四郎は卯の方角から奇襲を仕掛けろ。囮だが、可能ならそのまま侵入してしまっても構わない。だが無茶はするな」
「そして……厄介な忍隊だが、文次郎、留三郎、お前らは二人で敵の忍隊に混ざり内部を撹乱させろ。嗅ぎ付けられぬようしっかり足止めしろよ」
タソガレドキといい、優れた忍ほど厄介なものはない。相方があれとはがっかりだがかなり手応えのある役割に二人とも満足げな笑みを浮かべた。
「俺は? 何もしなくていいの?」
「……は単独で動け。どう動いても構わない。回りが敵の目線を背ける間にお前が大将首を掻け」
「だんれもおめーと組みたくないからおめーだけ単独だとよ!」
「うるせーよ錫高野。俺だってこんなあまちゃんどもと組むよか一人のがましだわ」
「……」
ピクリと眉をあげる文次郎など気にも止めず、気だるげな少年は最後に不吉な言葉を残す。
「俺が大将首とるのが先か、お前らが混乱に乗じて俺の首とるのが先か。どっちになっても面白いよな」
***
「……」
作戦当日までの間、東から来た二人は忍術学園で過ごすことになる。喜三太や一年は組と面識のある錫高野与四郎はともかく、を一人にしておくわけにはいかないと、六年が当番制でつくこととなった。
ふらりと外に出たの背後、木の上から警戒するのは食満留三郎だ。
こつん、と。
どこからか転がってきたサッカーボールは運悪くの足元へぶつかり弱々しく転がっていった。
しかしボールなどに目もくれず、彼が足元のそれに気が付いたのは走ってきた一年生が声をかけてからだ。
「すみませーん!」
「足元のボール、取ってもらっていいですかー?」
「ん…あぁこれか。ほらよ」
「ありがとうございます!」
「こんな寒い日に外遊びとは元気だなー」
頭を撫でられた一年生が「はいっ」と笑いペコリとお辞儀をして去っていくのを見届け、男はわざとらしく伸びをして口を開けた。
「いい加減武器から手離せよ」
「気付いていたのか」
「いや気付いたというよりお前の武器が光を反射して眩しいだけ」
それは盲点だったと武器をしまい木から降りる。その間も男は退屈そうに欠伸をするだけだった。
「お前、何でボールが当たった時に反応してやらなかったんだよ」
先程の様子では何も子供が嫌いという具合でもないのに。何故声をかけられるまで無反応だったのか。
「何でって、気付かなかったからだよ」
いつもと変わらない飄々とした姿なのに、声がいつもより重く感じるのは何故だろう。言葉にならない疑問は、その日の夜に紐解かれることなどまだ知らない。
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