その日、忍術学園の六年生は学園長の庵へと集められた。
“任務”である。今までにも実習とは別に任務というものを受けてきたが、今回の任務には皆が疑念を抱いた。

「学園長先生、今回の任務、報酬額が余りにも多くはありませんか?」

代表した仙蔵の問いに、静かな声で答えた。

「妥当じゃ」

と。
渡された巻物にはきり丸が見れば狂喜乱舞しそうな額が躍り、その影にいくつかの不穏な文字がじっと鳴りを潜めていた。

「ライメイ城城主の暗殺……」

見聞の広い長次ですら知らない城だ。この辺の物ではないだろう。何故忍術学園にこの仕事が舞い込んだのか、部屋の入り口に控えていた山田利吉が説明を始めた。

「確かにここよりもかなり東にある城だが、最近では物凄い勢いで勢力を拡大している。兵力や馬は勿論、火器や忍者まで大量に抱えている城だ。このまま放っておけばこちらに進軍してくるのも時間の問題だ」
「そこでじゃ。この城を落とすことを、我々忍術学園と、東にあるとある忍術学校での合同任務とする」
「合同任務?」

東にある学校とは喜三太が通っていた風魔忍術学校だろうか。
学園長の入りなさいという声に、皆が襖に目を送る。
が、いっこうに開かれることなく、部屋に微妙な沈黙が続いた。


「ごほんっ!」

痺れを切らした学園長の咳でようやく外からの気配は動き、勢いよく襖を開けられ、見慣れない紫の装束を身にまとった忍が姿を現す。

「あっはー、すみません。あまりに話が長かったので寝てしまいました」

いやぁ失敬失敬と薄ら笑いを浮かべる姿が鼻についたのか、あからさまに警戒心を剥き出しにする文次郎と留三郎。

「お前はどこのもんだ?」
「随分忍としての自覚がないようだ」
「まぁ廃校寸前の小さなとこだなぁ。あ、確か風魔学校の付属に成り下がるんだっけ?」

喧嘩腰の二人など気にもせず、彼は至って飄々と答えた。

「とにかく、任務が出たならやりますとだけ言えばいい。忍なんざ出された物に黙って応えればいいんだよはい解散」

用は済んだと言わんばかりに部屋を出る男を学園長は何も咎めず見送った。

「何ですかあの男は!」

床を叩き怒鳴ったのは留三郎。いつもならそれを宥める伊作でさえも学園長の返答を待った。

「奴の名は。出身は奴の言ったまんまじゃ。ちと協調性に欠けるが、身体能力ははかり知れん。向こうの校長からも鉄砲玉として好きに使ってくれと言われておる。生死は問わんとの事じゃ」

つまりどのように作戦に組み込むかが鍵というわけか。仙蔵が頭を悩ませるわけだ。

「小平太より厄介なのがきたな」
「私はあそこまで身勝手ではないぞ」


>>

   -戻る-