体育祭が終わり、二日間の休校となったが、無論教師には関係ない休暇だ。生徒がいない間にグラウンドの整備やプロからの指名連絡の手続きなどこれからの行事の準備をしなければならない。やることは山積みだった。ただでさえ時間が足りないのにうまく動かない腕では尚更作業効率は悪い。
「おっと」
「………すまん」
「無理すんなよ」
ただの目眩だ。ふらついた先でまだ怪我の治っていない足は踏ん張りが効かなかったのだ。偶然横を通りがかったに支えられる形になった相澤は気まずそうに小さく礼を言う。
「お前、今日は休めよ。二日あるんだし、明日やりゃァいいじゃん」
「そうはいくか」
「真面目だねェ。少し手伝ってやるよ」
「いらん」
「そんな警戒しなくても。荷物持ちくらいなら問題ないだろ」
体を支えている方とは反対の手が相澤の抱えていた教材をするりと抜き取る。
急に体を寄せられた事に否応なく体を固くする相澤は抵抗する間もなく荷物を奪われた。
「はは。そんな警戒されると悲しいじゃん」
「………すまん」
「この仕事は俺がもらう。根詰めてまた倒れられちゃかなわねぇ」
がどんな顔をしているのか、分からない。視線を外へ向けてまた小さく謝罪した。ゆっくりとの腕から抜け出しまた教室に向け歩き出す。昨日の騒々しさは嘘のように静かな廊下が、ただただ息苦しかった。学生時代と同じように二人で歩いているだけなのに。
ただそれだけなのに。
1-Aは体育祭を終えてからも何度かとの実践訓練は行ったが、いまだに個性を発動させる者はいなかった。
芦戸は口を大きくイの字にして悔しがる。
「悔しいぃ!あのビュンビュン飛ぶ機械のせいで攻撃も避けられちゃうし!」
「それで機械を壊そうとしたのね」
「あの試合はいつもと先生の動き違ったよね」
「そうですわね……"個性"を使わない以上あのワイヤー移動だけがアドバンテージですし、封じられるのは防ぎたいのでしょう」
「いやいや、パワーローダー先生が修理嫌がるからだよ」
「ぎゃあぁあ!?!?!?」
円陣状で喋る女子の間に割って入りながら八百万と耳郎の肩を抱くに、遠くにいた峰田は静かに激怒した。ずるい、あんなことを自分がした日には顔が腫れるまで殴られるに決まってる。横にいた瀬呂は「やはり顔なのか……」と暗くぼやいている。
「さんいつからいたんですか……!?」
「女のコたちのコソコソ話が聞こえてつい引き寄せられちゃった」
「だからチャラ男やん……」
「それで?俺の攻略法について考えてたの?」
峰田の怒りを煽るように顔を近づけながら、耳郎の瞳を覗く。その行為に下心やいやらしさが見えないのは、きっと本来の癖だからだろう。
「そうだとして、そんなの本人に言ってどうするんすか」
「ハハ、確かに。ちなみに俺がこのクラスで警戒してんのは麗日と爆豪」
突然水を向けられた二人は驚きと警戒を含んだ顔で声の主を見る。その事を分かってか、遠くで聞き耳を立てる爆豪にも聞こえるような声量で話しだした。
「爆豪は引くほどの向上心とそれに伴う頭脳があるから、そろそろ俺の弱点を。麗日の無重力個性は俺のこの機械と相性が悪い」
射殺さんとばかりの目付きで睨みつける爆豪の赤い目は、ゆったりと口角を上げるをはっきりと映す。
「体育祭では見直したよ。ボコって悪かったな」
「“ボコった”だァ……!?」
謝ったところでかえって火に油を注ぐだけなのだが、それについては特に言及せず睨みをきかす爆豪から背を向けた。まるでもう、関心が無くなったように。
「なァおいテメェッ!」
「何騒いでるんだ」
帰りのショートホームルームを始めるべく相澤が教室に入ってくる。落ち着かない教室を見渡し、女子と肩を組むを見つけては爆豪に負けず際しい目線を向ける。
「はいはい離れまーす」
降参ポーズで二三歩離れるのを見届けてから経緯を障子に説明させる。その話が本当なら目を瞠るものがある。あのが、爆豪に謝罪をするなど。
「そんなに驚かないでよ。俺だって仲直りしたいのさ」
「………」
「悲しみと違って、わだかまりは時間で解決できないからさ」
和解に持ち込もう
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