「今日のヒーロー基礎学はUSJで行う」

USJの単語にクラスに緊張のようなものが走る。気にするな、とは言わないがいつまでも引きずってるようではヒーロー活動など出来やしない。まして今回は死人など、出ていないのだから。

「13号に代わりとプレゼントマイクが付き添う。二人は先に行って支度してるから、お前らはコスチュームに着替えてバスまで行け」

まだ包帯のとれない相澤では目が届かないとのことで付き添いを頼んだのだが、プレゼントマイクは分かりやすく嫌な顔をしてウゲェとまで言った。

『俺、今のあいつ苦手なんだよなァ』
『俺だって』
『はぁん』

何だ『はぁん』て。
思い返してムカついている場合ではない。誰もいなくなった教室で大きくため息をはき出席名簿を持ち直した。


   ***

「ヘイ!おせぇぞイレイザー!」
「出迎えなら頼んでないぞ。お前ら仲悪くなかっただろ」
「悪くはなかった!だが今のあいつのピリピリ具合はお前も気付いてんだろ!」
「………」
「あれでバレてないと思ってんのが痛々しくて見てらんねぇよ」

同じ教師として、それ以前に学友としてどう付き合っていくべきか悩ましいと額に手を当てた。山田ひざしですらこれなのだから、相澤消太など、頭を抱えても足りないくらいだ。


「え、先生が怖い?」

麗日の声に葉隠は右手の人差し指を立てシィと言った。

「あのUSJの襲撃事件の時にね、私見たの」
「透ちゃんがいたのは砂嵐のエリアだったわね」
「そう!」

白かったはずのワイシャツは赤や黒で汚れていたこと。いつもはぼんやりと下ばかり向いている目をギラギラと光らせ何かを探していたこと、ヴィランを執拗に痛め付けていたこと。

「何か理由があったんだとは思う。あれっきり怖い先生は見てないから。でも、だからこそ怖いというか……」
「そういえば、警察の方々が来られた時にはもうお姿はありませんでしたわね」
「確かミッドナイト先生が先生がどうのこうのって言ってた気がする」

女子の内緒話はよく聞こえる。聞き耳を立てていた上鳴や峰田も話に加わり、輪はどんどん大きくなっていった。

(そうだろうか)

そう思うのはおそらく緑谷だけで、だからこそ大きな声で否定できないでいた。

『君たちには感謝してんだ』

あの優しい声は、演技とかじゃない気がしたけれど。煙草の煙を吹き掛けられた時だって、『息を止めろ』と忠告された。だから緑谷にとってははわざと悪役のような振る舞いをしているとしか思えなかった。飛躍する話に声を上げて否定することもできず、二の足を踏む。

「くだらない話をするほど余裕があるらしい」

相澤が生徒達の話をピシャリと遮断した。気まずさ故か声を詰まらせる生徒達に準備運動の指示を出し岩の横に立つ。

「聞いてたのに」

先に来ていたはしゃがみんで自分の膝を使い頬杖をついていた。出るにでられないんじゃなくて、こっそり聞いてたんだと、聞いてもないのにそう呟いて。
お一人様高みの見物
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