「まだA組は見てないから知らないけど、ここと同じくらい根性なしが集まってたら悲しいな」

B組の実技授業に付き合い始めてまだ2,3日しか経っていないが、は飽きたのか疲れたのか、壁にもたれ掛かって項垂れたように足元の石を蹴飛ばした。

「何!?うちの生徒が腑抜けだとでも言いたいのか!」
「いやぁ……全員ってわけじゃなくても、『教師に勝てなくて当然』って思ってる奴がちらほらいるし」
「僕は思ってませんけど!?そもそも教師とすら認めてないし!大人が学生相手にマウントとって格好悪いなとは思ってますけど!!」
「はいはい可愛いねモノマ。俺の事好きなんだね」

適当にあしらうの行為が火に油を注ぎまくる。血管を浮かび上がらせ歪めた口でハッと息を漏らした。

「好き!?!?何を自惚れた事を!貴方への関心など!微塵も!ありませんが!?」

そろそろ止めさせようと拳藤が右手を上げたタイミングで、ふふっと楽しそうな笑い声があがる。声の主はだ。

「いいね、“無関心”。それ大事だよ。無関心でいれば俺の個性なんか怖くないから」

皮肉めいた、しかしどこか嬉しそうな笑顔に生徒達の方が動揺してしまう。何か言い返さねば。物間が必死に頭を回転させているとき、ヴィランの侵入という緊急事態を知らされた。


   ***

セメントスがを諌めるより早く、スナイパーが引き金を引くより早く、
正面の入り口とは離れた位置にある窓を叩き割りUSJに飛び込んだがトリガーを引いた。

「殺してはいけないよ」

インカムから聞こえる校長である根津の言葉に返事もしない無礼な男は、それでも眼前の敵に蹴りを食らわすだけで命までは取らなかったようだ。

先ぱ……先生」
「向こうへ行け。」
「……!はい」

味方であるはずなのに尾白に向けられた目線に身震いした。怒鳴られるより静かに怒られる方が怖いと言うが、あれはもう、怒っているなんて生易しい感情ではないように思えたのだ。

「ここにいたら殺される……!」

直感的にそう感じて、自慢の尾で地面を蹴り他のエリアに飛ばされたであろうクラスメイトを探しに駆けた。最も、尾白がすぐにこの場を離れようと思ったのにはもう一つの理由があるのだが、それに気付く余裕はなかった。

「…………ここじゃない」

その声を聞いて後退り、姿を隠したヴィランはまだまともだと言えよう。

「今だッ畳み掛けろッ!」

と数の有利に驕って襲撃したヴィラン共は本当に取るに足らない──この程度の敵相手に掻き乱される生徒なら全員退学にしろ、と思わせるほど──烏合の衆だった。

「なぁ、まさかお前らみたいな雑魚にうちの教師がボコされるとは思わねェんだけどさァ。どこにいけば会えるんだ?」
「ひひっ……!誰が言うかよ!」
「あっそう」

胸ぐらを掴まれ、燃えるビルに背中を叩きつけられてもまだ口を割らないヴィランの行動がの怒りを増幅させるだけである事を、この後身を持って知ることになる。



「くそ!こんな事ならちゃんと校長に渡された校内マップに目を通すべきだった!」

諸々あった後ようやく火災エリアを抜け、いざセントラル広場へ向かおうとするもまた別のエリアへとでていた。

「何ッだよここは!砂ぼこりがひどいのに何で凍ってんの!?寒い!ここは氷雪エリアかな!?」

八つ当たりするように声をあげ、その声に気を失っていたヴィランが目を覚ます。おはよう、と声をかけられたヴィランはひぃ、と小さく悲鳴をあげた。

「なぁ、セントラル広場ってどこ?」

抑揚のない声だった。轟の個性により冷やされた体が更に冷えていくような感覚に、もはやヴィランとしても男としても矜持はなく震える指で砂埃の舞う中央を指差す。方向を確認して、後はもう興味を失ったように男を地面に放ち駆け出した。
言われてみりゃあっちが騒がしいな、などと呟きながら。


   ***

駆けた先、冷静に考えれば何を迷っていたのだろうと呆れる程セントラル広場の場所など明確だった。オールマイトが開けたであろう天井の穴。ひと悶着あったのだろう土埃と、濃い、血臭。

「…………セメントス先生」
「申し訳ありませんが、オールマイト達のことは私たちに任せて貴方は生徒の元へ向かってくれませんか」
「はぁ?」

はぁ、じゃないわよ。インカムから声を拾ったミッドナイトがの元へ駆ける。どうやらプレゼントマイクの不安が的中したらしい。

「オールマイトの事なんか知らない。それより今あんたがセメントの向こうに隠した、あの、黄色いゴミ、あれ……あのゴーグル……」

君」
「香山先輩……」
「今はミッドナイトよ。貴方も今は───」
「マッドラヴ。今はそう名乗ってる」
「……そう、何でもいいけど教師として、落ち着いた振る舞いをしなさいってこと」
「落ち着いてる至って冷静だだからこうして貴女と会話してるしただ俺は───」

しまった。
あっさり嗅いでしまった眠り香に「どこが冷静なのよ」という言葉がよくしみる。
力なく倒れる視界の隅で到底無事とは思えない量の血液を見た気がしたが今はとにかく

「おっ、ぱい…………」
感情抑制無理そう
<<  >>


Back