「たっく、何度気絶すりゃ慣れるんだよ」
「ははは、面目ない……」
ローが自身の能力を使って病気を治すための手術をした時は、腹を裂いた瞬間勢いよく後ろへ倒れたし、その後も動物を仕留め捌くたびに気絶する始末だ。普通の解剖とは違うそれに、いまだ違和感が拭えない。
「そんなんじゃ海賊としてやっていけないぞ」
「………」
「なぁコラさん、おれが海賊になるっつったらアンタはついてくるか?」
「海賊に……」
ローと二人で海軍本部、ひいては父と兄の元から逃げた来たのだ。今さら海軍には戻れないというのに、それでも自分が潜入任務ではなく“本物の”海賊になるというのは躊躇われた。その沈黙がローにとって残酷なことをしていると分かっているのに、首を縦に振ることができない。
「コラさんはあの
、てやつが好きなんだな」
「好き!?」
「嫌いじゃないだろ」
「あぁなるほど。……勿論好きだ。あの人はおれの兄貴だしな」
「兄弟はドフラミンゴだけじゃないのかよ」
「そうだ、
さんとは血が通ってない」
「……」
ローは筋の通ってない話を好まない質にあった。明快な問と解が揃わないと自分で納得するまで突き詰めるのだが、あまり優秀とは言えないロシナンテにとってそれは時に苦労するものであり、今回もそうだ。
「家族は両親から生まれたものだ。そうじゃない集まりはどうせ『ファミリー』だろ。いざとなりゃ裏切るのも簡単だ」
実際コラさんも黙ってあの部屋を抜けてきたじゃねぇか。
そう言われては何と言い返せばいいかまるで分からなくなった。ローの言葉に傷付いたというのもあるが、何よりローの境遇に立って考えるとその場しのぎの言葉は、口にできない。
「…………きっといつか」
ロシナンテが口にする言葉の続きを急かすように、ローの大きな瞳はロシナンテから逸らされず、じっとそれを待っている。
「きっといつか、お前にもできる」
「嘘だ」
「嘘じゃないさ。血の繋がりだけが家族じゃない」
「なら、何が家族になるんだよ、種族か?利害の一致か?」
「そんな簡単なものじゃない。もっと特別な、絆というのかな、切っても切れねぇ縁が“家族”にする」
「…………」
「もしかしたら、相手が同じような人間じゃない何かかもしれないぞ」
「は?人間じゃない?」
「例えば白熊とか、巨人族とか?」
「はぁ、一気に嘘クセェ」
「待て待て、おれはただ同じ環境にいればそれで家族ってわけじゃないって言いたかった、んだ……」
慌てた様子のロシナンテを見るローの目は冷ややかなものから少しずつ、寂しさを帯びている事に気付いて言葉がつまる。視線から逃げるように顔を背けるローが躊躇いながら口を開きぽつりと言葉をはいた。
「じゃあ、おれとコラさんは“家族”にはなれねぇんだな」
「ロー……」
「薄々感じてたさ。アンタは海賊にはならないって」
憤りを隠しきれないローの声にロシナンテの胸は当然痛んだ。なんて言えばいいのかは分からないが、最後に何を伝えたいかは決まっていた。
「あの時お前に言った『愛してる』は、ずっと変わらないからな」
「………………“シャンブルズ”」
ただ逃亡したいだけ