この日、いつも通り一番に教室についた飯田は驚いた。珍しく先客がいたのだ。
しかもその黄色い寝袋には見覚えがある。
しかし何故?いつもは朝のSHRとほぼ同時にやってくるはずの人がすでにいるなんて。

「その、相澤先生?」
「おはよう飯田」
「はっ!お、おはようございます!」

自分としたことが挨拶を忘れるとは何事かと一瞬恥じたが、それよりもやはり今日のイレギュラーが気になった。

「あれ、相澤先生?おはようございます」
「おぉ、おはよう」

先に保健室に寄っていた緑谷も到着し、やはり飯田と同様にイレギュラーに注目した。ちらほら集まってきた生徒もみな同じようなリアクションを取る。
心なしかいつもより顔色の悪い相澤は頭に疑問符を浮かべる生徒の視線を気にした様子もなく寝袋から這い出て教師用の椅子に腰かける。吐き出されたため息が重苦しい。



「あー……このクラスに臨時教師がつく」

緊張した教室で、皆の注目を集めた相澤が言うには、今日から雄英教師として仮採用を受けた研修生が来るらしい。
先日のマスコミ襲撃事件に対し思うところがあった校長により、雄英生の護衛として雇ったとか。よって教師としての素質はないが一応教師として雇った手前、本人も周囲も気は進まないが一応研修をやるんだとかモゴモゴ。
普段からあまりハキハキ喋る質ではないが今日は特にひどい。時々障子が通訳に入るほどだ。

「なるほど!それで、その研修生さんはどこにいらっしゃるのでしょうか!」

飯田の質問はもっともだった。本来なら既に相澤の横に立って挨拶をしているであろう研修生がいない。飯田の質問に対する返事の代わりに、峰田に窓を全開にしろと伝えた。合理主義の彼が意味もない発言をするわけないだろうが、一体何が起こるのか。

いずれ来るであろう衝撃に備えていると、突如窓枠に何かが引っ掛かり、キキキッと耳を塞ぎたくなるような甲高い音が教室中に響く。ガラスを引っ掻いたのだ。

「よっ!」

狭い窓のどこにもぶつからず、ものすごい早さで飛び込んできた男はそのまま壁を力強く蹴り衝撃を相殺した。オールマイトと張り合うような派手な登場だ。

「女の子に追われて、気付いたらこんな時間だよ。1ーAってここか?」

「チャラ男やん……」という麗日のぼやきも頷ける。左腕につけたごつい器具はヒーローらしさを感じるが、オーバーサイズのワイシャツは第三ボタンまで開いていて、黒のスラックスもサイズが合っていないのか靴を隠すほど下が余っている。
教師というよりは、生活指導の教師が目の敵にするようなだらしない生徒のようだ。

「えーです。相澤から聞いてるかもしれないけど、俺は教師というよりボディーガード的なポジションで呼ばれてるから。あまり頼らないでネ」
「……、、仕事中に名前で呼ぶな」
「そうだったそうだった。すまんねイレイザーヘッド」

にっこりと微笑みかけられたのが嫌なのか、露骨に不機嫌そうな顔で目をそらした相澤はそのまま男から半身を逸らした状態で生徒に話す。

「見ての通りこんな男だ。俺も人のこと言えんが、教育者として合理的思考は持ち合わせてない。ま、形だけの教師だと割り切ってくれ」
「ひでぇなっ」

からりと笑って右肘を相澤の肩に置く。こうして並ぶとそれなりに身長差があるようで、相澤はにとって少し高い肘置きのようだ。一瞬だけ表情に動揺の色を浮かべたように見えたが、すぐに力強く叩き落とし正面を向かせ挨拶の続きを促す。

「まー特に授業を受け持ったりはしないが、実技の付き添いや放課後の自習とかには付き合うから、まぁ教師というより先輩的なポジで?気軽に話しかけてくれ」

言われなくとも今のところ誰も教師として見ちゃいないがなるほど先輩、確かに若々しい見た目をしている。

またキャラが濃いのが来たなぁと、それで済ませるあたりこのクラスの適応力はそうとう高いと見える。
金のたまごにご挨拶
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