逃げれば追うが

洋服や歌、メイクに言葉遣いまで。世の中には流行り廃りというものがある。それは武器にも同じことが言えるわけで。

太刀川さんが圧勝してた時は弧月がめちゃくちゃ流行ったし、迅さん達がスコーピオンを作った当初はもう爆発的に使用率があがった。どの武器も重さや脆さなど、好みが分かれるため結局最後はある程度バラけるわけだが、今後も新しい武器が開発されれば流行りは生まれるだろう。
「えーまだそれ使ってんのー?」とか「今はこれが熱い!」とか。

「そういうのがレイガストにはないわけよ」
「はぁ」
「別にいいんだけどさ、流行ってようが廃れてようが使い勝手がいいものこそ正義なんだから」
「別に廃れてはないと思いますが」
「流行ってもないがな」

向かいの席に座る鋼は黙々とテーブルの上に菓子を並べている。どれもこれも俺の好物だ。記憶力がいいとはいえこれはさすがに記憶の無駄使いだろ。

「まさか鋼が袖の下を使うなんて哲次が知ったらショックだろうな」
「荒船に教えてもらったんです」
「あの野郎」

次から次へと並べられる菓子。さすが、二次侵攻で特賞を貰った男は収入が違うなぁ……てタンマ、そろそろ止めないと際限ないぞ。

「待つんだ鋼、毎回言ってるがさすがに今回はもう無理だ」
「そんなことありません」
「そんなことあります。俺ごときがお前に教えられる事なんかもうないから」

分かりやすく眉を下げて悲しげな目をされると悪いことしてる気になるが、実際無理なものは無理。レイガストを使う人は少ないからと俺に指南を受けに来るが、俺では釈迦に説法だ。レイジのところへ行け。

「レイジさんの使い方は独特だから」
「まぁ、そうなんだけど……」

頑として聞かない鋼と今すぐ帰りたい俺。もしここで俺が折れてブースに入ったとしてもお互い何をしたらいいか分からず気まずく立ち尽くすんだろう。過去にやったから分かる。

「お願いださん、一時間でいいから付き合ってください」
「1時間も!?」
「今日が忙しいなら後日でもいいです。なんなら30分でも」
「毎度の事ながら随分食い下がるなぁ」
さんのレイガストに対する創造力は、真似できないから」
「俺ももうネタ切れだよ。何見せてもお前、既に知ってるみたいだし」

俺のログでも全て見たんじゃねぇのってくらい。

「………あ?」
「~~っ!?」

今まで澄ましてた顔がみるみる赤くなっていく。さっきまで逃がさんと言わんばかりに距離を詰めてきたくせに、俺が顔を覗いてやろうと前のめりになるたびにへにょへにょと後ずさっていく。

「どうしたよ。ログを見返すことなら普通にやるだろ?」
「そう、ですよ、ね……」
「それとも、他に邪な理由でもあったのかよ。鋼」
「!?!?」

両手で肩を掴んで逃げ場をなくし、ようやくその顔を覗き見れば、可哀想なくらい顔を赤くして目を潤ませた鋼と目があった。

「あー、もしかしてお前グホォ!?」
「すみません忘れてください」

腹パン決められようが逃げられようがサイドエフェクトが無かろうが、あんな顔、そう易々と忘れられるわけがない。

「待てよ鋼ぉ!」



もう少しからかってやるつもりで鈴鳴に足を踏み入れたが、鋼以外の隊員が揃って「鋼をよろしくお願いします」と頭を下げてきた。うーむ。逃げられないのは俺の方か。




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