シューティング!!
「あー、トリオン体って最っ高!」
飯はいらない排泄物もない。日がな一日こうしてゲームをすることができるのだ。最高。組織はくそだがやってる事は最高だぞボーダー。
「その結果ここで一日中ゲームをしているのか。目障りだ」
「そう言わないでくださいよ~元A級とだけあってここの居心地は格別です。いいなぁ俺も部隊持とうかな」
なんて、思ってもない事言ってみる。そんな俺を見透かした犬飼がにやりと笑ったのをテレビの写りこみ越しに見た。俺もそっとにやけ返す。
「どうせシューティングゲームをするのなら個人ランク戦でもしてくればいいのに」
「やだなぁ。あれとゲームとでは全然違うよ」
「同じだろう。銃と刀持って走り回るだけだ」
「違いますよ。このゲームは血が出る」
カチカチ、カチカチ、コントローラーの軽やかな音が作戦室によく響く。これでもまわりに気遣って片耳にイヤホンをしてゲームをしているから皆には聞こえないが、斬られた敵はうぎゃあだのなんだの悲鳴をあげて倒れるのだ。だって、痛いから。切られると痛いんだ。
「トリオン体なら痛くもねぇし血もでないのに。人が撃てないなんて鳩も雨取ちゃんもワケわかんないよなァ」
持ち換えた銃で敵の眉間を撃ち抜いて行く。額から血を吹き出して糸が切れた人形のように崩れ落ちる敵兵を今度は素早く盾にして前から銃剣を持って突っ込んでくる敵に向かっていく。
「あ、」
折角切り伏せたと思ったのに敵は体に手榴弾を巻き付けていたらしく画面にはYour deadの文字。力が抜けた俺はぐだんと体を床に転がす。
180度逆さまの視界の隅で辻は居心地悪そうに参考書を広げ、犬飼はこちらを指差して笑った。
「あはは、こうなると思った!」
「犬飼、気付いてたなら教えろよ」
「戦場では誰も教えてくれないでしょ」
「それもそうか」
体勢を起こすとき、一瞬だけ不服そうにこちらを見る二宮さんと目があった。分からなくもない。人の作戦室で他人が、よりにもよって俺がゲームをしているのだから。怒鳴られ出ていけと言われても致し方ないとさえ思ってる。何で言ってこないんだろう。
「痛みがほしいならトリオン体に痛覚を入れればいいだろう」
「分かってないなぁ二宮さん。ゲームなら戦った分だけ経験値が入って強くなれるんですよ。あんな数字だけのポイントじゃなくて」
強くなればその分いい武器や防具が買える。ここもボーダーではあり得ないよね。東さんもC級も同じイーグレッドを使ってるし。
「理想ですよね。俺も強くなりたい」
「強くなってどうする」
「ボーナスステージに行きたくて」
ボーナスステージとは何だって?もちろん、ボーダーの闇として屠られたあの事件に決まってる。
上層部を黙らするほど強くなれれば、もしくは。
「二宮さんは臆病だから行かれませんね。いつまでもボス戦の手前でレベル上げ周回するタイプでしょ」
「言ってる意味が分からないが、少なくともここに座ってそんなものをするより訓練した方が有意義だろう」
やたら追い出したがる二宮さんの様子から察するに、そろそろ二宮隊は防衛任務に行くのだろう。そりゃ俺がいたら邪魔か。
ならそんな回りくどい言い方をせず邪魔だとはっきり言えばいいのに。
「昨日の個人ランク戦、何もない俺が村上と五分でした。なかなか才あるでしょ?」
それに対してすごいと言ってくれたのは犬飼と氷見の二人のみ。辻はともかく二宮さんはもう少しリアクションしてくれてもいい。
「ソロでそれだけ立ち回れるんだから戦えるし、向こうで俺が死んでも誰も文句言わないよ。ブラックトリガーになる覚悟だってある。だから俺を遠征に連れていってくださいよ」
あんたらが諦めたのなら、俺一人であの子を探すよ。
「しつこいよ、。あんまし言うと二宮さんに嫌われちゃうよ?」
熱くなった俺に言葉をかける犬飼の目はとても冷たくて、ゲームの中で俺に銃口を向けた兵士によく似ている。
「……嫌いにならないよ。二宮さんは才能のある人間が好きだから」
「……」
でも俺は、二宮隊の誰も好きになんかならないけど。
シューティング!!
ゲームの音声通話はオンになっていた。この会話が聞こえていたであろう仁礼の所に遊びに行こう。ゲーム機の電源を落として端に寄せる。次に来るときもまだゲーム機はこうして置かれたままなのか、密かに楽しみにしているのだ。
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