「太刀川慶、大学に来たのなら真っ先に俺のとこに来るべきだろ」
「そんなに熱烈に俺のこと求めてくれるなんて照れるな」
「よし、お前の学生証はここで叩き割る」
「ウソウソ。
様
様、数々の代理出席確認ありがとうございました」
「『ました』って言うからにはもうやらないんだろうな」
「それはネイバー次第かな」
「ふざけんな」
ご丁寧に財布の中にしまわれていた学生証は2週間ぶりに太刀川の手元に戻ってきた。受験当日の朝に慌てて用意した証明写真が貼り付けられた学生証はまだ見慣れない。
「大学入って早々海外旅行とはいいご身分だな」
「ん?まー海外っちゃ海外か。俺が強いばっかりに大変なわけよ」
「恐らく来月の試験も大変だろうよ」
「まじか」
これが本当に海外旅行であれば、理由も文句もなく太刀川の面倒を見てくれた友人のため沢山のお土産でも持って登校するのに。海どころか宇宙を超えた先では渡せるものなど何もない。
『結局
には何も返せなかったな』
『なんだよ気持ち悪い、お前に感謝の心があったなんて知らなかったよ』
『それはお前の理解不足だ』
『そうかい。まぁ安心しろ。その辺の恩諸々こみで忘れるらしい。ボーダーの技術はすごいよな』
『……』
『まぁ、もしお前が俺に借りを感じてるなら』
『あぁ』
『どこかであったらその時は、また友人になってくれよ』
「なぁ、昔会ったことがあるの、覚えてるか?」
「またその話か、もう聞き飽きたよ」
会ったことない。大学に入って初めて会った。
飽きたと言いながらも毎回律儀に同じ答えを繰り返す。会ったことがない。そういう
の答えに太刀川の格子状の瞳がわずかに傷ついたように細められるのだが、本人のおどけた態度のせいで気付かれてはいなかった。
「嘘だよ。本当はお前ともう一回
戦りたかったけど」
「なに、その手の下ネタか?」
「ちげーよ、死ね」
【「昔会ったことがあるの、覚えてる?」
別れ際に名なしのBが微笑みながら言う。
「またその話?もう飽きたよ」と返す。
すると名なしのBはすこし傷ついた表情で言った
「嘘だよ」と】
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