「あーイテテ、君を裏切った罰なんだろうな、これは」
「目ぇ覚めた?」
「覚めた覚めた。覚めなければよかったよ本当に」
内蔵ごとばっさり斬られたら普通即死じゃん?
敵として正面から向き合った百矢の男前な鋭い眼光を最期の景色にそのまま逝けたら良かったのだが、これが因果応報か、神様は楽には死なせてくれないらしい。
呼吸器に血が張り付いて息苦しいのに本能的に体が酸素を求める。酸素を取り込んで膨らんだ肺に骨が刺さって更に痛い。
「怖いねぇ不思議だねぇ。どうしてこうなったと思う?」
「マジリ姉さんに言われてきたんだろ」
「そうだよ」
「ならどうしたもこうしたもない。言われたから殺す。それでいいだろ」
「嫌だなぁ隠し事なんて。最期にそんなもの残されたら遺恨が残るじゃない」
斬られた脇腹にゆっくり百矢の親指がめり込んでくる。氷室の悪影響だなこれアイツ絶対殺す。
「ンン゙ッ…!人の血に直接、触れるもんじゃねぇよ」
「吐く気になった?」
「あー……そうだな」
血が流れすぎて目眩を起こしているのかと思ってたが、どうやら視界に広がる広い光の粒は本物の星らしい。どこかの屋上かな、人目につかない場所をしっかり選んで殺してくれたようだ。
「マジリ姉さんに、家族を辞めたいと言ったんだ」
「あぁ…じゃあ殺されても仕方ないね」
「はは、うん」
「姉さんはなんて?」
「理由を聞かれたから、家族同士だと、恋人にはなれないからってちゃんと答えたよ」
「へェ、一体誰に恋しちゃったの?」
排水溝から水が流れていくみたいに体から血が出てってるのがわかる。恐らく血と一緒に少しばかり俺にもあった理性とかストッパーも流れていったみたいで、言わんでもいいことがスラスラと。
「百矢」
「──あっはは!愉快だねぇ、面白いねぇ!マジで?本気にしちゃうよっ嘘なんでしょ?」
笑って茶化されたというのに星空のおかげが心はずっと軽いままだ。だから自分にも人にも嘘がつける。
「嘘だよ」
最期にそんなもの残されたら遺恨が残るもんな。
【「君を裏切った罰なんだろうな、これは」
星を見ていた名なしのがじっとこちらを見て言う。
「本気にするよ、嘘なんでしょ」と返す。
すると名なしのはどこか遠くを見つめながら言った
「嘘だよ」と】
back