いけすかない奴だ。
「普通科なんて来たくて来た訳じゃねーし」みたいな雰囲気醸し出して授業を受けてる姿とか、放課後、他の男子達が遊び行こうと誘っても首を縦に振ったことがねぇ。授業中も机の下でハンドグリップ握ってるのがチラチラ見えて鬱陶しい。どうせヒーロー科の事しか考えてねェんだろうその頭に教科書をバスンとぶつけてやる。
机に突っ伏して死んだように動かない心操が少しだけビクッとして慌てたように体を起こした。
「昼休憩終わってんぞ。次移動教室」
「あぁ……悪い」
何が『あぁ……悪い』だクソ。
じゃんけんに負けたから起こしてやったがあっさり顔を背けられて微塵も感謝が感じられない礼にはイラつく。
思わず洩れた舌打ちについて言及されるのを恐れて、心操が支度をしてるうちにさっさと教室に向かった。おいそこ、臆病とか言うなよ。
放課後の友人付き合いは最悪だが、放課後は是が非でも直帰する!という訳ではないらしい。放課後の掃除当番は手抜かりなくこなすし日直当番の仕事もきちんと終わらせて帰る。が、自分のペースでやりたい俺にとってはそのセカセカした態度が遠回しにさっさとやれと言われてるみたいでムカつく。
「用があるなら帰っていいから。後はこいつにやらせるし」
用もなくふらふらと残っていた友人の首を掴んで道ずれにしてやる。せっかく帰してやるって言ってんだからもっと喜べばいいのに、なんとも複雑そうな顔をして鞄を担いだ。だっから、お礼に感情がこもってないつーのッ!
***
放課後を持て余して学校の敷地内を散歩して、趣味とも呼べないくらい中途半端にやってる写真撮影。ここは緑が多いからよくリスや野鳥がやってくる。いつもみたく静かな芝生で被写体を探していると、目にしたのは動物ではなく不快物。
ヒーロー科の事しか考えてねェ心操だ。
「……」
「何してんの?」
草むらにしゃがみこんで何をしているのかと思えば何てことない、ただ猫を撫でていた。
「あぁ……」
俺に声をかけられたのがよほど居心地悪いらしく、立ち上がろうとしたが猫がその手を離さなかった。困った風を装いながらも猫を撫でる手は偉く優しい。
「俺も猫好きなんだよねェ」
気紛れだった。
別に猫は好きじゃねぇし、むしろ毛がつくし何考えてるかわかんねぇ顔が好きじゃない。
だから本当に気紛れによって呟いた嘘だ。
いつもとは違う雰囲気の心操にちょっかいを出してみたかっただけ、
「!
も猫好きなんだ」
何で名前呼びなんだよ。
「あぁ、可愛いよな」
とっさにまた嘘をついた。
いつも何を考えてるのか読めない目にくっきりと光が写ってる。少し横に移動したのはまさか俺が猫に触りたいと思っての事なのか?
「お前のおかげで話すきっかけができたよ、ありがとな」
喉を鳴らす猫を撫で付けて、いけすかない奴は見たことないくらいしまらない顔で笑ってる。
いや、なんだ、…………嘘だろ?
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