当たりどころは悪くなかった。
急いで帰り止血すれば助かると周りは励ました。しかしそれは矢に毒が塗られていなければ、の話だ。冷静にも射抜かれた本人は希望は無いことを分かっていた。だから感覚の失われつつある右腕を鷲塚んで必死に
の体を引き摺っている男にもういいと囁いた。
「血の跡をつけられたら全員見つかる。僕はここに置いていって」
「……若がお前も連れて帰れと仰った」
「死体を持ち帰っても仕形ないでしょ」
「…………」
少しの沈黙の後、「弱音を吐く暇があったら足を動かせ」と言われた男は血を垂らす口の両端が少し上げる。
いつもと変わらない。
やる事為す事全てがどんくさくて見ていて腹が立つとよくなじられた。いつもと変わらない邪険な扱いにこの時は安心すらしていた。
「……っ!?」
毒が回りうまく力の入らない左手だが、なんとかナイフを持ちグラディウスの肩へと当てる。痛みなどほとんどないが、それでも突然の攻撃に思わず掴んでいた腕を離して、掴まれていた男はそのまま力なく地面に横たえた。
「……何をする」
「ここまでありがとうグラディウス。若のこと、ファミリーのこと、よろしくね」
「そんな事、お前に言われなくても…ッ!」
吐き捨てられた言葉を聞いてもその口は穏やかで。
「僕を嫌ってくれている事が目に見えてわかることは、とても安心するよね」
「……」
「おかげで罪悪感も悔いもなく逝けるよ。ね、グラディウス」
「笑って」
「…………最期まで、腹立たしい」
そう溢すグラディウスがマスクの下、目に涙をためている姿を男は見ただろうか。毒に侵された目では見えなかったろうか。
嘘をついたのは、どちらだろうか。
僕を嫌ってくれている事が目に見えてわかることは、とても安心するよね。
『笑って』
#嘘は嘘。
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