ペプシ味 /天童覚
「七夕祭り行かない?」
「仙台の?すごい人混みだべ」
「オレはいいよー」
「それどっちの“いいよ”?」
クラスの前方でがチラシを掲げてる。インターハイ予選で3位敗退だったとは聞いてたけど、それ以降のは積極的にクラスの友人らとも遊んでる。前に『クラスメイトも好き』と言ってたのは本当らしい。
「制服で参加できる最後のチャンスだぜ!行こうよ!」
「じゃあ何時に集合する?」
「あの銅像前で集合な」
聞こえてくる会話をなんとなく聞きながら校庭で体育の準備をしている瑛太くん達を眺めてる。やる気十分なのはいいけどハンドボールでケガしないように気を付けてよ、わかってると思うけどサ。
「天童」
「へ?」
「ダメもとで聞くんだけど──」
「俺はパス。部活も何時までかかるかわかんないし……」
ちょっとタンマ。今の俺食い気味すぎなかった?話聞いてたのとか話振られること予想してたとか、そんなこと思われてない?ほら案の定、目の前にいるは目を丸くして黙っちゃった。もーやだ帰りたい。
「んは、俺の声でかかったよな?悪い悪い」
「ンーまぁそうだねェ」
「そんで、あ~やっぱ忙しいよな」
はもう一度笑いながら謝ってからまたグループの輪の中に戻って行って、それ以降も祭りのことで話はどんどん盛り上がっていく。
予選で敗退したとこと違ってうちは忙しいんです。誰に何言われたわけでもないのにささくれ立った気持ちで意地悪なこと考えてる。俺っていやな奴。
***
「七夕祭りに行きませんか!?」
「仙台の?すごい人混みだべ」
「オレはいいよ」
「ハーー……何このデジャヴ」
「どうしたんですか、天童さん」
こんな身近に伏兵がいるとは思わなかった。まさかと同じことを言ってくるなんて。
「工さァ~夏は大きな試合がいっぱいなのに随分余裕だねェ?次期エースになるのは諦めたのかな?」
「そんな事ありません!ただ、このメンバーで思い出を作れるイベントと言うのがあってもいいかなと…」
「そんなの『優勝』だけで十分でショ」
「それはまぁ、そうですが……でも!制服で出かけられる機会ってそうないですよ!」
「ア゙ァ~~??」
「イダダダ?!急にどうしたんですか天童さん!」
「それわざと言ってるんじゃないよね~~~?」
わざとやってるんじゃないかってくらい工との言葉が被ってる。結局話を聞いていた太一達が乗っかって、どうするのよと視線を向けた獅音がまさかの肯定しちゃったもんだからもう仕方ない。
「じゃぁ俺も行く~……」
鉢合わせたら気まずいなぁなんて考えたりもしたけど、別にいいか。
***
……なんてのが去年の夏でしょ。
「来たぜ、七夕祭り!」
「例年以上に暑いし人多いぃ」
「そうは言っても来てくれるんだよな」
大学に入ってから筋肉が落ちてるというのに、は既にどこの屋台を回るかを考えてる。この調子だとやっぱり俺の予想通りどんどん太るかも。うわぁ、それすごく嫌。
「が『高校の時は一緒に行けなかったから』てうるさいから折れてあげたんでショ」
「それ言えば来てくれるから」
「次からそれ禁止」
「わかった。なら別の口説き方を考えなきゃな」
「……」
揶揄ってるのかと睨みつけてもしれっと何でもない顔してるから困るんだこの男は。
「お、ちょうどこの辺りだよな。吹き流しが多くなるこの辺」
「何が?」
「去年偶然覚たちと会った場所」
「あー……」
そりゃ覚えてるよネ。部活で行けないとか言っておきながら結局部活のメンバーと来てたんだから。
偶然俺を見つけた時のの顔、今でも覚えてる。
予想してない行動を取られた時に見せるあの驚いた間抜け面、試合相手が浮かべてるのを見るのはたまんないけど、のそれを見てもあんまり、ちっとも、気持ち良くなかったんだもん。
「あん時俺超テンション上がってさァ」
「……は?」
「だって、『天童も一緒に来れたらなー』って考えてるときに目の前にいたんだぜ?そりゃ嬉しくもなるだろ」
「そういう顔だったの?アレ」
「うん。なのに覚ったら、すごぉく気まずそうな顔して逃げてくんだもんなぁ」
「……なんか、ってホントよくわかんない」
「そう?もしかしたら俺、お前のブロックを振り切るようなすごいスパイカーになれたかも」
「バレーのが向いてたかもネ」
「あっはは!」
はいつもと同じく口を隠して嬉しそうに笑った。
戻