英雄/爆豪
一月一日。つまり元旦。
正月は、正月くらいはアラームに起こされることなく平日を迎えたいのが万人の願いだろうに、俺は今年も普段より早い時間い設定されたアラームに叩き起こされる。隣の部屋で寝てる兄からの壁ドン付きだ。まだ開かない目でなんとかアラームを消す。昨夜の自分、朝に備えてスマホの明度は下げといてくれよ、おかげで俺の目は大ダメージ喰らったんだぞ。

「……さむ」

布団を肩まで掛け直したら二度寝まっしぐらだと頭では分かっているのに理性が負けるほどの寒さに肩どころか頭まですっぽり布団をかぶり直した。
カーテンの隙間から入ってくる朝日がいい具合に布団からでた埃を照らして、ほら、俺これ好きなんだよ。
毎回この話するたびにあいつは最後まで聞いてから『もう聞き飽きた』って言うんだ。あぁそう、あいつ、勝己が……

「うお、やっべ起きなきゃ…っ」

フローリングの冷たさと頭に浮かんだ勝己のキレた顔のおかげで一気に目が覚める。そうだ、今年も勝己と初詣に行くんだ。ほんの数分のつもりがとんでもない時間の二度寝をしてしまったらしく、時刻を確認するのと同時に着信が鳴る。当然表示には爆豪勝己の名前だ。

「あけましておめでとう!」
「……おう」

驚いた顔の勝己が着信を切る。俺が寝坊して怒った顔の勝己が迎えに来るのは毎年の事なので、今年もそうなると思っていたんだろう。ふふ、今年の俺は一味違うのだ。たった5分の遅刻に抑えている。

「ドヤってんじゃねぇ!遅刻だわッ」
「ごめんなさい!」
「チッ、行くぞ」
「いやいやまずは勝己、あけましておめでとう」
「……おめっとさん」

雄英高校に入ってテレビで勝己を見るようになって、随分遠くに行っちまったなぁと思いながら家でアイスを食ってた時だったかな。勝己から連絡を貰ったのは。

「まさか高校に入ってからも一緒に行ってくれるとは思ってなかったから嬉しくて」
「テメェから約束してきたんだろ」
「それも込みで覚えててくれてるとは思わねーじゃん。な、手繋いでいい?」
「死ね」

勝己はなんともいえない顔をしてそっぽを向いてしまった。俺としてもにやけただらしない顔が締まらないままだからそっちのが都合がいいんだけどさ。話したいことは山ほどあるので耳と口だけは俺に向けてほしいな。なにせこの有り難くも愛でたい日は今日一日しかないわけだから。



『勝己、俺と毎年一緒に初詣いこ。そしたらどんなに忙しい年だって俺は構わないよ。その日に一年分話そうぜ』
Back