排球/澤村大地
いつも通りの時間に起床。ダウンを上から下までしっかり閉めて雪道にも強いと謳われている革靴を履いて、いつも通りの時間、電車に乗る。
学生の頃はさすがの部活もこの時期は休みで、家でおせちをつついたり同級生と初詣に行ったりしていたのに、もうずっと前のことのようだ。
息を吸うたびにキンと冷える肺が痛くて胸を叩く。電車は案の定空いているが、どこかへ出掛けるのであろう家族がちらほらと座っていた。
「お」
車両の後方に同僚を見つけつい声がでたが、浮ついた車内で澤村の声を気に掛ける人はいなかった。
「ばぁちゃん正月早々どこ行くの」
「今年は孫が受験で来られないって言うからね。お友達と旅行に行くのよ」
「へぇいいじゃん。雪で車も人も滑りやすいからさ。浮かれすぎんなよ」
「アンタはもっと浮かれなさいよ」
「正月からお仕事なのに浮かれらんないよぉ」
知らない人に声をかけるのは彼の癖らしい。妙齢の女性を見送り、警察署の最寄り駅に着くまで車内にいた子供たちと何やら遊んで──傍から見れば遊ばれて──いた。
「あけましておめでとうございます」
「……お、澤村さんだ。あけましておめでとうございます。今年もよろしくです」
お互い息を白くしながら署まで歩いていく。見かけたからと話かけてしまったが、当番も違えば交番も違うし、普段接点もないのを思い出して若干後悔した。ここから署に着くまでの5分、話は持つだろうか。
「澤村さんもこの辺の人でしだっけ?」
「うん?」
「元旦からの出勤って憂鬱じゃないですかぁ。県外なら尚更」
「あー、そうですね。俺はここ出身です。なんならまだ実家暮らしですし」
「そっか。ならよかった」
「そういうさんは今日出勤日ではないはずですが……」
「あー、交番の先輩がどうしても親戚の集まりに初孫を見せたいって言ってたから代わってやったんす」
「家族を出されると断りづらいですよね……」
澤村の返事が予想外とでも言いたげにヒヒッと笑い肩を小さく小突いてきた。まるで友人のように
「最初はゲェと思ったけどお土産買ってくるって約束したからいいんですー。それにほら、早速いい事あったでしょ」
ゆっくり喋ってみたかったんだよって、某副部長みたいな満面の笑みで。
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