海賊/スモーカー
「あけおめことよろ!」
「……」
「なんだよノリ悪いなぁ、折角酒まで持ってきたのに」
「帰れ」

すぐに言葉が出なかったのは初めて見る和装が、普段の制服すら着崩すようなだらしなさい姿とは見違えていたから。締まりのない表情や浮かれた声を聞かなければ突然執務室に入ってきた無礼者に攻撃をしていたかもしれない。
思わず握りかけた十手から静かに手を離してデスクの向かいにある椅子を足で押す。わずかに埃が舞ったがどうせ気にしないだろうし、実際は構わずにどかりと腰かけ更に埃を舞わせていた。

「新年早々仕事たァ精が出るね。それも事務仕事って、別に今日でなくても良かったんじゃねえの?」
「この仕事してりゃあ元旦も何もねェだろうよ」
「よく言うぜ。たしぎちゃんにはしっかり休みを取らせてるじゃないの」
「……」
「お優しい上司だこと!」

は白い歯を見せて朗らかに笑って見せた。日の入りが悪いこの部屋でよくもそれほど明るい顔を見せられるものだと呆れてしまう。そうとも知らないは机の書類を眺めながら片手で酒の瓶を回して遊んでいる。スモーカーが再度ため息をついてようやく書類から目を離し微笑んだ。

「ま、この量なら一日で終わらせられるな。どうせ青雉さんが出勤するのは明後日だし、この仕事は明日頑張って、今日はゆっくりしょうぜ。お参り行こう」
「明日だと何人か出て来るぞ」
「だからだよ。今日は恋人と静か〜に過ごしたいってわけ」
「……」
「スモーカーに妥協して職場まで来たんだぜ」

先ほどよりずっと険しい表情で、スモーカは椅子にもたれ掛かった背を起こしながら咳ばらいをする。はにやにやとした表情を崩さないままスモーカーが何を言い出すのか肘をついて待った。

「……だからこそ今日仕事を終わらせるんだろうが」

お互い明日休みだろう。どんどん尻すぼみになる言葉を何とか拾って、は目を丸くした。

「正月早々こんなうれしい事があるか?」
「……」
「まさかスモーカーからそんなお誘いをしてくれるなんてなぁ!今年はいい一年になるぞ!」
「うるせェ!口より手を動かせ!」
「はいよぉ」

楽しみだなんて言って浮かれた同僚の手前渋い顔を崩せないが、さっさと終わらせてしまおうと遊ばせていた葉巻を灰皿に押し付けた。
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