「撃てー!どがーんダガーン!」
「……」
「おっ、なんだその冷めた目は」
「貴様がこんなとこで何やってんだ」
「ナニじゃねえよ。ほら、向こうからデカイ海賊船が2隻来てるだろ?」
指さす先を見ても海賊船はおろか貿易船すらない穏やかな海だというのに、男はいまだ砲台に跨って大砲を撃つ真似事をしている。
「……」
「なんだいその苦々しい顔は。俺に会えて嬉しかろ~?」
これについては返事をせず、口にしているニ本の葉巻から相手の顔を隠すぐらいの煙を吐いて視界を覆う。
「俺は会いたかったぜ。懐かしい同胞達がいまだ現役バリバリで頑張る姿は見ていて面白いもんな!」
人を小ばかにするような笑い方は昔から変わらずで、いつもなら黙らせるべく拳を振るうが、両手はズボンのポケットに突っ込んたまま。
「はぁ……これ見ろ」
気を逸らすように複数枚の紙を突きつけた。
「んん?何だこれ?」
「"あの島"にいた奴らがこぞって海兵に志願したせいで今度は教育側の人手不足だ」
「へえ!こりゃ嬉しい。人が集まってくれりゃあ海軍も安泰だな」
スモーカーが持つ書類をゆっくりと眺めて満足げに笑うが、 スモーカーには到底そんな気分にはなれなかった。
「──こんだけの新兵集めたって、お前がおっ死んでたら世話ねェよ」
ずっと言ってやりたかった。
青白く生気のない肌と窪んだ頰の癖に表情だけは満足げな死体を責めたが返事などなく、いつものうるさい姿からは想像もつかないひどく変わり果てた亡骸を前に、柄にもなく気落ちした時期もあったのだ。
「ははっ!スモーカーの貴重な姿!こりゃいいもんが見られた!」
こちらの心情も知らず、民間人の命と引き換えに鬼籍に入った同僚だけがずっと楽しそうで、なんて言い返せばいいのか言葉が出てこない。
「スモーカー大佐!」
背後から走ってくる部下はそれこそ男の雄姿に感化され海軍に入った人物で、今後ろにいる同僚は今日一番の声で笑ったのを最後に静かになっていた。
「見張り台からはるか前方に海賊船らしきものが見えるとの伝令が入りましたが、進路はどうされますか?」
「……そりゃ、でかい海賊船が2隻だろうな」
波の音に紛れてほらね、と笑う声が聞こえた。
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