副担任な恋人攻男主と
馬鹿で苦労することは多いけど、馬鹿だから得することもある。
高校の近くにあるマンスリーマンションに住む君の部屋番を知ってるのはA組で俺だけだ。なんでかってつまりそういう間柄だから。
こうしてマンツーマンで勉強を教えてもらえるし、人目を気にせず好きにイチャつけるってわけ。
下心はあるが英語がヤベーのも事実だし、教材をかばんに詰めて家に行くと、案の定学校でのスーツ姿からは想像もできないスエット姿の君が寝癖つけたままの頭で出迎えてくれる。
「君英語教えて〜」
「先生な」
「いーじゃん今学校外だぜ!」
滑り込むように玄関に上がり込み、さり気なく下駄箱をチェック。手を洗うときにタオルを探すふりして洗面所を見渡す。よし、異状なし。
「で、何がヤバいの?授業か、来週の小テスト、もしくは来月の発音試験?」
「全部!」
「死ね」
「見捨てないでくれよ君〜っ」
飛付けば受け止めてもらえるし、慰めるように頭も撫でてくれる。文句を言いながらもこうやって俺を甘やかしてるの、本人はわかってんのかな?
「ところでお前、人んち来るのに菓子の一つも持ってこなかったの?」
「あるよ、ほら」
頭の上から降ってくる君の声を聞き逃したくないけど、持ってきたお菓子を見せびらかしたい気持ちもあって、ずっと持ったままのビニールからお菓子を取り出したら君は「俺これ好き」と笑った。
当然じゃん。前に君が好きだって言ったの覚えてるんだから。
「飲み物用意してくるから、教材だして待ってろよ」
「分かったー」
しばらくしてキッチンからプシュッという炭酸特有の爽やかな音が聞こえる。自分はコーラ飲まないのに家に常備してあるのはつまり、スゲェにやけちゃう。
「何ニヤついてんだ」
「いやぁ。愛されてるなって」
「俺は頭のいい子が好きでーす」
カラン、と氷の入ったグラスが目の前に置かれるのと同時に持ってきた菓子を開封し少しだけ君の方へ寄せて置く。本人は認めないけど、こう見えて甘党な君は無意識なのかよく手が伸びるのだ。
「それで?何がわかんないんだ」
全部は無しだぞ、と先手を打たれては口を紡ぐしかない。ほんとに全部わかんないんだけど、何を覚えるべきかもわからないし日本語じゃない言葉の発音の仕方もわかんねぇ。
「うぅ……じゃあ、この小テストの範囲教えてください…」
「公私混同はしません」
「ですよね〜……そういう所も好きです」
「はいはい」
いつものことながらしれーっとかわされる。4文字って、過去最短じゃん。ここはさ、俺も好きだよとかって言うのが世のカップルじゃねぇの?
「なんだか不服そうだな」
「べっつにぃ」
「ちなみに前々回の授業でテストに出るところをマイク先生は親切に教えてたぞ」
「えっ!?聞いてない!」
「そうだろうな。お前は授業中芦戸とふざけあってたから」
「……み、見てたの?」
「副担任ってのは意外と空き時間が多いものでな」
「それこそ公私混同じゃん」
「あの時俺がどんな気持ちだったか」
口調はとぼけた風でも、こっちを見る君の目は、その、たまに見るギラギラしたもので
「……もしかして、嫉妬してんぅっ!……んっ、ふ、」
息ができないとタップしてたら、君は愉快げに息を吐いて口を離した。仕方ねぇじゃん、不意打ちのキスなんて、そんなもん慣れてねぇつーの。
「お前は人の浮気を気にする前に、自分の振る舞いを考えろ」
「んな…!バレてる……」
「分かったらさっさと気持ち切り替えて勉強しろ」
「えぇそりゃないぜ生殺しじゃん!」
こんな状態で勉強できるかよ!もう一回チューして!駄々こねる俺に君は呆れ顔を向けたが、俺の粘り勝ちだ。仕方ないといった様子でゆっくりこちらに顔を近づける。
「俺はさ、頭のいいやつをどろどろに甘やかして、泣かすのが一番好きなワケ」
耳元でそれだけ囁いて「これで勉強する気になっただろ」だって?だからそれ、逆効果なんだってば!
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