片想いしているハチャメチャに鈍い男に
そろそろキレそうなルッチ
誤解のないように言っておくと、『クマドリでも察するレベル』と言うのはクマドリに対する悪口ではない。
「よよいっ!!流石のおいらァとて、あっ!今のォは分かるってもんでィッ!」
「声がでかいわい。廊下にいたらどうする」
「あいすまぬッ!」
こういった人の色恋に疎いクマドリですら「ロブ・ルッチは・にだけ甘いように見える」と察したというのに、それを享受している本人はどういう思考回路をしているのかまったく気付かないご様子で。
ルッチの甘えも「我が儘かよ」と唇を尖らし、希にみるルッチからの媚も「何が狙いだ?」と疑って、塔の中で姿を見つけるたびに近寄るルッチに「あ、どうぞー」と場所を譲って立ち去る始末だ。行かないでくれ、とは当事者以外全員が思ってる。
こんな爆弾残していくな。
「よっ、なんの話してんだ?」
「おーか」
「な、なんだよその嫌そうな顔」
「気のせいじゃ。仕事も無事終わったようじゃな」
「おー」
かったるそうに首を回して手に持った瓶ビールを右手に持ち替え片手で王冠栓を開ける。ロビーに置かれた大きなソファーにゆっくりと座っていざ瓶を口に入れようとした時、骨ばった白い手に取り上げられた。
「あ゙?」
「……」
の唯一の趣味である飲酒を取り上げようと思う人物など一人しかいない。見せつけるように、ゆっくりと酒を消費していくルッチに当然は腹を立てたが、からの罵倒の嵐が押し寄せる前にルッチがの襟を掴み無理矢理立たせる。
「…………ぃでッ」
「その肩を放置しておくつもりじゃないだろうな」
「ほぉ、肩を怪我しとったのか。わしらは気付かんかったのォ?」
カクのフォローにルッチが無意識なのか小さく鼻を鳴らすからつい笑いそうになる。しかし、はここでもほしい反応はしてしてくれなかった。
「ケッ、人の怪我ばっかめざとく見つけやがって俺の評価落とすつもりかよ」
「なぜそうなるんじゃ……!」
カクとて二人の間を取り持とうなんて気はさらさらない。が、何度も言うがこんな爆弾を残していくなと思う。不機嫌さがありありと分かるルッチは顔を伏せたまま舌打ちをする。
「おいロブ・ルッチ!」
「…………なんだ」
「俺には言うくせに自分は行かねぇのかよ!」
「なんの話だ」
「左手の甲!変に火傷の痕なんか残したら今後の任務に支障をきたすだろうが!」
「…………」
ムッとするルッチの右腕をムッとしたが掴んで引っ張ってロビーから消えた。
「あいつに今尻尾があったらの腰にでも巻き付いてたじゃろうよ」
「ヨヨイ!」
***
またしても誤解のないように言っておくと、はロブ・ルッチが嫌いな訳ではない。よく言えば素直、飾らず言うと安直な男だからルッチの分かりづらい感情表現には微塵も気付いていないのだ。恐ろしい程に。
を自分のものにしたいが明け透けな態度を出すのは自尊心が許さない。そんなルッチが考えたギリギリのラインが贈り物で、遠征に出るたびに貢ぎ物を持って帰ってくる。
「ほらよ」
「あ?」
おもむろに投げ渡された瓶は一目見ただけでも安くないと分かる代物で、前に一度だけ任務で赴いた土地で飲んだ地酒だ。品質の問題で輸出ができないからなかなか手に入らないとぼやいたのはもうずいぶん前の事。
「ロブ・ルッチお前、」
「……なんだ」
「時々俺が喜ぶことをしてくるが何か意味があったりする?」
自惚れるなと罵ってやるつもりだったが、自然な流れで肩を組まれこそこそと潜めた低い声を耳元に流されつい声が詰まった。
「………」
それ以上何も言わないルッチの顔を覗きこんでいただったがふむ、と一人納得したように頷いてこう言った。
「お前に限ってそりゃねぇか!酒ありがとな!カク達と飲むわ!」
「ッ」
突然始まった殺気立つ鬼ごっこを見送りながらやはりカクはこう思う。
「爆弾ばかり残していくな」
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