021.11.11~

【スモーカー】

廊下に響くのは壁に打ち付ける痛々しい音で、しかし加害者であるはずのスモーカーの方が苦しそうに顔を歪めていた。

「痛いよスモーカー」
「……ッ、お前は……ッどこまで馬鹿なんだッ!」
「声もうるさい」

何重にも包帯を巻いた手をひらひらさせても、場の空気が和むことは当然なく、ギラギラと光る目が余計鋭くなるだけだった。

「何をそんなにキレる?俺はお前に迷惑かけていないよ」
「そうじゃねェ」
「じゃあなにさ」
「……」
「自分でやっててわからないの?」

煽ろうとしての発言ではない。ただ思ったことを口に出すだけ。素直といえば聞こえはいいが、その無神経かつ愚直な考えがスモーカーを怒らせていることには微塵も気づいていないのだ。

「クロスボウの先端には海楼石がついてた。部下思いでロギアの君は正面からそれを受け止めようとした。海楼石にも気付かずね」
「……」
「もうどちらかが傷を負わねばならないのなら、それは俺の役目だよ」
「それが気に入らねェ」
「個人的感情で否定するな」
「………次はこうはさせねェ」
「ふむ。ならこうしよう。お前が自分の身を案じるなら俺もお前のためにそうしよう」

覇気を纏った手でスモーカーの両腕を退けて数歩距離を取った。

「交換条件だよスモーカー。相手の無事を願っているのはお互い様なのだから」


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【心操人使】

「おいこら心操ォッ!」
「なんだようるさいな」
「ウルサイナ!?そりゃうるさくもなるわッ」

ドカドカ足音を立て近寄ってきた同級生の姿につい心操は悪態をつく。まんまと挑発に乗りながらも、勢いよく伸ばされた手は真っ直ぐに心操の抱えるダンボールを奪った。

「手!怪我してんだろ!」
「……」

取り返そうと力を込めてもダンボールどころか指一本動かせず、終いには諦めろと頭上から詰められた。

「純粋な腕力じゃまだ俺に勝てないらしいな!」
「うるさい。それより今日はずっと忙しく走り回ってただろ。こんなことしなくていいよ」
「馬鹿野郎!好きなやつの手伝いは最重要要件だろうが!」

「………え……気持ち悪」
「ンだとォ!?」

放課後とはいえ廊下で突然なんてことを!
思いがけない言葉に頭が真っ白になって、咄嗟にでた言葉がいつもどおりの悪態だったことに対して申し訳なさを感じる余裕はなかった。
ただ、いつもは憎らしい高身長もバカでかい声も、今だけはただありがたかった。

「おい心操!ところでこれどこ運ぶんだ!」
「今こっち見ないで」
「ハァン!?」


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【牛島】

お、ここの店ササミが安い。湿布なら差し入れで渡しても嫌がられないだろうな。明日湿度高いけど大丈夫かな。…………あ。

「どうした、朝から難しい顔をして」
「んー。おはよう牛島。今日も大きいな」
「体調でも悪いのか」
「いや、めっちゃ元気」

俺のへらりと笑った顔を見て、牛島若利は納得したのか力強く頷き自分の席へ戻っていく。それを確認して大きく息を吐いたのは、平常心を保つべくいらん緊張をしていたから。

(気付いてから余計に緊張するようになった)

ふわふわと浮ついた自分を鎮めるように俯いて頭を掻く。
こんなもの抱くだけ厄介だ。牛島の親しいクラスメイトという贅沢なポジションを失いたくない俺は胸に燻ぶらせた思いに蓋をするように笑って話を終わらせた。本当はもっと、話したかったのだが。



「今いいか」

そう声をかけられたのは気づいてしまった日から2週間後、ちなみに明日はインハイ試合がある。そんな大事な日の前日にこんな所で油を売っていていいのだろうか。…なんて心配するのはただの建前でその実緊張するから急な声掛けに困っている。

「いいよ、どうした?」
「ここ最近、パフォーマンスが落ちている」
「それは問題だな」
「あぁ。生活習慣や練習環境等思い当たる節は全て見直したが一向に良くならない」
「なるほど…」
「全てお前のせいだ」
「なるほ……え?」
「お前の態度がここ最近おかしいからだ」

だから前のようにしろと言われても、そんなの、俺にはどうすることもできないんだけど。


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貴方は牛島で『全部全部、君のせい。』をお題にして140文字SSを書いてください。
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