魔王城でおやすみ--
--かえんどくりゅう

その時、に衝撃が走る。

「今…何て言った?」
「……」

上司に頼まれ致し方なく食事を持ってやってきた牢屋で、はトレイをひっくり返さないように気を遣うのに必死だった。というか落としてしまう既の所ででびあくまたちが引き取ったので無事お遣いは成功したのだが、もはやこのまま引き下がれない、にはどうしても確かめなければならない事ができていたのだ。

「お姫…もう一回言ってくれ。サンタには、いいサンタがいるのか…?」
「いるよ。一年中いい子にしてたら来てくれるサンタさん。願い事を靴下の中に入れていくと、そのプレゼントを届けてくれるの」
「別にプレゼントの貰い方は聞いてねぇ!サンタってのは、どういう見た目だって…?」
「えぇ?どうしようかなぁ教えてあげてもいいけどぉ」

部屋中に響く舌打ちに牢の外で待機していたさっきゅんは静かに退席した。ドラゴン属というのは総じてガラが悪く、その例に漏れないに対してよくあんなに平然と交渉に出られるものだ。呆れ半分姫だからと納得半分に姫どらを抱えてを出て行こうとしたが、後方からの派手な音につい戻ってしまった

「フンッ。──おら、俺の鱗をやる」
「ウガーッ!?さん血がでてる!!」
「問題ねぇ。俺の鱗は取れればすぐ生えてくる」
「でも痛いでしょ!?」
「『イタイ』…?」
「急に語彙力を失う……」
「それでお姫!そのサンタとやらの情報を!」

何を言っても聞かないのでさっきゅんは諦めて今度こそ牢を離れた。本人に言うより保護者に言った方が話は早い──言えるかどうかは別として──

「えぇとねぇ。サンタさんは赤くて大きくてぇ…」
「ボスだ…」
「いっぱいの部下を従えてて大忙しでぇ」
「ボスだ…」
「でも優しいの」
「ボスだァァア!!」

わあああああ!!!目をまん丸にするスヤリスや飛び退くでびあくま達には目もくれずは諸手を挙げて歓んだ。来た時の暗い雰囲気などもうどこにもない。むしろ手袋ごしにスヤリスの手を掴み礼を言って急ぎ牢を出た。もはや鍵すらかけてない。


   ***

「ボス~~!」
「うるせッなんだ!」
「ボスってサンタさんなんだな!」
「あ゙ぁ゙?」
「ハッ!こういうのは大きい声で言っちゃいけねェのか!」
「あぁ…姫んとこ送ったせいで余計な知恵つけてきやがった…」

敬愛するボスは余計な知恵と言うがにとっては今年一番の有益な情報だった。今までの全てにちゃんと理由があるとわかったような、知る前とは違う世界に生きているくらいの衝撃だったわけだが、それを説明するための知能がないためボスであるかえんどくりゅうにはただただ騒がしい部下が目の前で拳を振り回しながら熱く語っているようにしか見えない。何故か、涙目だし。

「──つまり、ボスはサンタさんなんだ…」
「だからなんでそうなるんだ。あと何でそれでお前が泣くんだ?」
「あはは…だってボスはサンタさんだから優しいんだろ?」

堂々巡りだ。欲しい回答が得られないまま目の前の部下はぼろぼろと涙を流しそれを見る周囲はなんとも冷たい。このままでは自分の好感度が勝手に下がるばかりだ。なんとかせねば。

「もう一回順を追って説明しろ。俺がサンタだと…仮にサンタだとして何でお前が泣くんだ」
「ボスが優しいのはサンタとしてなんだろ天」
「だァからそれが意味わかんねェの!」
「そりゃあ俺もお姫からサンタの話を聞いた時は『嬉しい~!』て思ったさ。サンタは人間界の人気者で、それがボスなら嬉しいじゃん?」
「ん?んん…」
「でもよ、そしたら今までボスが俺にしてくれた優しさも俺に見せてくれたあの顔も、みんな『サンタ』としてなのかなって思うと悲しくてぇ…!」
「はあ?」
「俺とのあんなことやこんなことも全部…っ」
「ハァ!?何か勘違いされるような言い方すんじゃねェ!」

にやにやと集まっていた野次馬達が一気に白目を剥いた。親しいとは思っていたがそれはクーロン島からの付き合いだとばかり…。いや実際その通りなのだけれど。

、それよりお前、腕から血が出てるぞまた鱗剥がしたのか!」
「うわぁんその優しさもサンタだからなんだァァ!俺への愛はないんだろォ~!」
「あ…」

普段のかえんどくりゅうならもっと早い段階でこうしていたはずなのだが、この時は彼もまた冷静ではなかったわけで。
拳でを黙らせて事態の沈着化を図るときにはもう既に面倒くさいくらいの見物客が集まっていた。誤解を解いて回るのにどれだけかかるだろう。


日ごろ文句も言わず付き従っているお礼にと、わざわざお嬢に付きあってもらいながら用意した個人的なクリスマスプレゼント、このままだと渡す機会を失ってしまう。泣きたいのはこっちだ畜生め。



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