ヘタリア---プロイセン


「メリヰクリスマス!」
「うをぁびっくりした!」
「わはは!随分と大袈裟な反応をなさる!」
「こら止めなさい君。すみませんプロイセン君」

今年のクリスマスは枢軸でパーティーをしよう!イタリアの提案で──会場は当たり前のようにドイツ宅なのだが──開催されたクリスマスパーティーには、三国多少の差はあれどそれぞれが持ち寄った食事や装飾で彩られ、絵に描いたような温かみのある会に仕上がっている。
だからこそ腰にホルスターを下げ黒いスーツに身を包むの姿は異様だった。上司である日本も申し訳ないと思いながら窘めざるを得ない。

「いやはや恐れ多くも身辺警護の任に選んで頂いたのでつい浮かれてしまいました!あぁ日本さん、腕時計の左側に小さなピンがついているでしょう。何かあれば此れを引いてください。すぐ駆け付けます」
「はあ、申し訳ありません。君だってクリスマスの予定があったでしょうに」
「ええ!逢瀬の約束をを三度も反故にしたんではさすがに見限られましたがね!」

満面の笑みでとんでもないことをいう。イタリアは兄弟はヒェと小さな悲鳴をあげた。勿論彼の上司に対する無礼な態度についてではなく、彼女にフラれたという点にだが。

「それは本当に申し訳ありません…」
「いえ、この勅命を賜った時に女は諦めていますのでお気になさらず。では、警戒に行って参ります!」

人差し指と中指だけ立てピッと額の横で手を振り部屋をでた。暖炉のない廊下は寒いだろうと防寒具を勧めたが『いざという時動けないから』と断ってしまったため外套を羽織っただけの姿は見ていて寒々しく、日本は殊更申し訳ない気持ちになっていた。

「でも珍しいねえ。日本が警護つけるなんて」
「ええ、折角の日に申し訳ありません。少々家の中が荒れていまして」

撃たれても死なない自分たちのために、血を流せば死んでしまう人間がその身を盾にするというのが嫌で、この日の集まりだって本当は断ろうと思っていたのに。

『何故あるかもわからん殺人予告のために日本さんが我慢するのです?行きましょうよ。むしろ俺は他のお国様方に会ったことがないので、日本さんがよければむしろ連れて行ってほしいのです』

今にして思えば日本が気を遣わないための方便だったのかもしれないが、当時は男の言葉を真に受けて嬉々として招待状の参加の文字に丸を付けて送り返したのだ。

「そんな思いつめるなよ日本。そもそもここにたどり着く前に何重もの警備を潜り抜ける必要があるんだぜ?警戒すべきは空港くらいだろ」

最初は申し訳なさげだった日本もお酒が入るにつれ気が緩んで、夜の十時を回る頃にはもう皆出来上がって、舟をこぐドイツやイタリア達に徳利を押し付ける日本をなだめながら、プロイセンは腕時計に搭載されたピンを引く。
二分と経たずに息切らした男が部屋に飛び込んできた。

「ハァ…ハァ…何事かと走ってきたというに…っ」
「一大事だぜ?ほら見ろ。日本がこんな醜態さらしてるんだから」
「枢軸しかいないのでよほどの事でない限り大丈夫と日本さんから伺っております。信頼されていますね」
「ケセセ!信頼されてるのはお前だろ。上司でもない限りあいつが誰かを連れて歩くなんてそうねェよ」
「恐縮です」

はプロイセンに一礼して机に突っ伏し眠りかけている日本を起こそうと傍へ寄るが、すぐ横の椅子が勢いよく引かれたため手で制し足を止めた。

「折角だし一杯やろうぜ」
「仕事中ですので」
「お堅いなァ日本人は。こんなところまで襲撃に来ないだろ?」
「仰る通りですね」
「…ケセ、平気な顔で嘘つきやがる」
「え?」
「まあいいさ。お前の真面目さに免じて表に転がってる奴らはうちが対応する」
「……さすが、聡いお方ですね。忍者の如き活躍と自負していたのに」

確かに腰に下げた銃の弾数は減っていないし火薬の匂いもしない。しかし先ほどホルスターの裏側についていたナイフが無くなっていて、先ほどとは違う白手袋をはめている。何があったのか、プロイセンからは明らかだった。

「ケセセ。一人で対処したのか?褒美に俺様から何かクリスマスプレゼン卜をやるぜ、何がいい?」
「ありがとうございます。ですが、もう頂きましたので」
「ハッ。まさか俺様と話す事、とは言わねえよなァ」
「まさにその通りですよ」
「欲がねェな。ご機嫌取りなら勘弁だぜ」
「いえいえ。欲なら際限なくあります。身の程を弁えているだけです」
「今夜は無礼講だ。『身の程』ってのを超えようとは思わないのか?」
「ヘア゚!?」

日本人らしく謙遜する彼の手を取り手袋を外す。爪の間に残る血舌拭ってやる間、男は顔を片手で覆いぐぬぅと声をあげていた。
ここまでされて据え膳食わぬ忍耐力、今は無いなもしれない。



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