ワートリ---風間

ウィンと軽い音を立てて作戦室のドアが開く。廊下の向こうで仁王立ちしている男を目視して風間は口を堅く噤んだ。

「いやあノーリアクションは一番きついって」

沈黙に耐えかねたらしい男が両腕を広げて感想を求めた。…いや感想も何も。この季節にのみ現れる上下赤い服を来た男になんと言えばいいのか。

「なんだその恰好は」
「何ってサンタだよ」
「見ればわかる」

風間が聞いたのは衣装のコンセプトではなく何故ボーダーでその恰好をしているのかだ。

「だってさあ、折角のイヴに二人ともボーダーでの仕事が入ってるってあまりにも虚しいだろ?それをごねたら寺島が…ふっ、トリオン体をサンタにしてくれた…っ」

どうやらイヴの勤務に不満を持っているのは寺島も同じらしい。技術の無駄遣いで鬱憤を晴らそうとするあたりエンジニアの鑑ともいえるのだろうか。

「見ろ。それらしく白い袋にプレゼントもいっぱい詰めてきた。今の俺は日本で一番サンタだ」

普段から可笑しい男だが自棄も入っているのか余計にふざけているらしい。自前で用意した髭も見せつけながらニッと笑って風間を勧誘してくる始末だ。やるなら勝手に楽しんでほしい。

「それにしても、いい年してサンタのコスプレで喜ぶとはな」
「ウッ」

楽しんではいるが心のどこかで思っていたらしい痛いところをつくとギュッと顔を歪めて動きを止めた。

「グエェ…痛いところ突いてくるな……」
「だが、思いのほか似合っているので少し見惚れた」
「グエェ…」
「そんなに嫌がるとは」
「照れてんだよ察しろバカ」

そんな絞められる直前のアヒルみたいな声で照れていると言われてもわかるわけがない。両手で顔を覆い天井を仰ぐ姿をしばらく眺めていたがどうも手持ち無沙汰での傍にある袋を覗いたが、意外にも中のプレゼントにはラッピングまで施される本格的なものだった。クリスマスへのこだわりにもはや狂気すら感じる。

「こんなに買ってどうするんだ。これ」

クリスマスイヴという行事への配慮は高校生以下に適用されたため今日明日の本部に来る子供は数人だ。
それなりに資金も使っているようだがこの量のプレゼントは持て余すだろうと思っての事だったが、は気落ちした声で否定した。

「施設の弟妹達用なんだ。ちょっと足りないけど」
「成程……」

前に風間と二人でいた時に一度だけ聞いたことがある。大規模侵攻よりずっと前から施設で育ったとだけ言っていたので、それ以上の事は踏み込まずにいるのだが。

「あいつら、院長に遠慮して言わないからさァ。今どきのガキが何欲しいか、陽太郎や小南とかから聞き出して買い集めたんだけど」
「まだ時間はある」
「は?」
「今から寺島のところに寄ってもまだ店は開いてるだろう。追加で買いに行くぞ」
「え、いや、いいよ」

何で財布出してんだよと風間を気遣うが、高卒でボーダーに勤めると現役隊員として賞与をもらい活動する大学生の風間では収入に大差がないと思う。本人の名誉のため口にはしないが。

「それに 今日はクリスマスイヴなんだろう」
「ああ」
「お前へのクリスマスプレゼントだ。とことん付き合ってやる」
「プレゼントは風間ってこと?嘘…なんかやらしいこと考えちゃう」
「ふん」
「まっ!今日の俺は皆のサンタさんなので?手出ししませんがね☆」
「おい」



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