貴方は最期に
「 I'm one with the Force, and the Force is with us 」
貴方は最後にそう囁いた。
「もうすぐここは破壊されるそうですよ」
「……」
「今日ほど自分の読唇術をわずらわしく思う日はないです」
「……怖いのか?」
「ええとても。私、どうやっても貴方の最期は見たくないのです。この身一つで貴方を守れるなら喜んで差し出す程に」
「愛されてるな、チアルート」
「気を悪くしたのならごめんなさいベイズ。勿論貴方の死だって見たくない」
ふとあげた視界にはいつものジェダ、私達の住むジェダがある。
「ベイズも、チアルートを通じて私を信じてくれた。だから貴方も」
死という単語に恐怖を覚え、私はまた彼に体を預ける。
鍛えられた厚い体のその中心。そこにある心臓の音は音だけは、耳の不自由な私にも聞こえる気がして。
私の一方的に回した腕を拒絶もせず、かといって受け止めもせず、ただ私の気の済むまで静かに呼吸を繰り返す。
「甘えですよね、ごめんなさい」
「……」
突然、周囲の空気が変わった。急ぎ周囲の人々の顔を見渡せばその口は『爆発だ』なんだと告げている。
「…爆発の側に、光を感じる」
「そうですね、おそらく先程の人でしょう」
「私たちは向かう。お前も来るか」
優しくて残酷な言葉は私に向けられている。
「ここから先は、貴方達二人で行ってください」
「……」
「それが最善でしょう?」
「お前は、一人で大丈夫なのか」
私を気遣うベイズの言葉もただ俯いて返事を待つチアルートも、私には十二分過ぎるほどに優しい。
「ただでさえここは危険だ。側にいれば守ってやれる」
「今まで十分守っていただきました。これ以上二人の行く先のお邪魔はできません」
これ以上の話は聞かないと目を閉じ二人の気配か消えるのを待ち続けるのに、気配はそこに留まったまま消えてはくれない。
どうしようかと悩む私は、しばらくの間背中に回される暖かい腕に気付かなかった。初めて、貴方からの抱擁を受けた。
耳元に顔を寄せる貴方の口が見えない。口が見えないと何が言いたいのか分からないと訴えてもその手はほどかれず、ただ聾の私に、貴方の声が届いた。
「……っ」
初めて聞く貴方の声はとても強く、頼もしかった。私の光。どうしても私は、優しく立ちはだかる貴方の崩れ去る最期は見たくないのです。
「さようなら、チアルート、ベイズ……」
届くような声は出せただろうか。それさえも分からない。
***
「……」
信じがたい光景とはこのことだろう。町が消えた。まるごとだ。
「ベイズ、教えてくれ」
俺たちの今までは一瞬にして
「全て?」
消えてなくなった
「街ごと?」
そのなかには───
「……教えろ」
「全部だ」
これで満足かと、問うてやろうと口をあけて、そのまま言葉は発さなかった。これ以上傷つけてやる必要はないだろう。
「まったく酷い話さ……」
町が消えた、つまりお前が消えたかと問う切羽詰まったチアルートの声をお前に聞かせてやりたい。
お前を見つめるの慈愛に満ちた優しい顔をお前に見せてやりたかった。
「酷い話だ……」
どちらも持ち得る俺が、なにもできずただ後悔をするだけなんて。
「あいつは、苦しまず逝けただろうか」
「どうだろうな」
「そう暗い顔をするなベイズ。別れの時はほんの一瞬。フォースの導きによりまた会える」
「自分の顔を見てから言え」
奴は悲痛な面持ちで笑った。
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