「いいなぁトモミちゃんは体術に優れていて」
「どうしたの?急に」
「別にぃ」
今日は珍しいことに、縁側には私とトモミちゃんの二人きり。他のみんなは近所の甘味屋へ行ったのだが万年金欠な私と「ダイエット中なの」というトモミちゃんはお留守番なのだ。ダイエットする必要なんて、ないと思うけど。
「でも私、ちゃんみたいに座学は得意じゃないから」
ぼんやりとトモミちゃんの輪郭をなぞっていた私は名前を呼ばれ意識を会話に戻した。
「いやぁ、頭でっかちな女は嫁げないってばぁちゃんが言ってましたー」
「あら、そんなこと言ったら腕っぷしの強い女だっておんなじよ」
「トモミちゃんはいいの、可愛いから」
トモミちゃんは照れたような怒ったような顔をして「からかわないで」と言ってどこかへ行ってしまった。怒らせちゃったのか。うぅん、本当にそう思うんだよなぁ。
とうとう一人きりになってしまったくノ一教室の縁側で私は恐ろしくて魅惑的な事を妄想する。いつからか私の心を巣食うこの感情を持て余し、それでも捨てられないこれは彼女に気付かれる前にいつか消えてくれるのだろうか。
「はいお茶」
「ほえ?」
私の間抜けた声に苦笑いを浮かべたトモミちゃんが湯気の立つ綺麗なお茶を差し出す。
「熱いから早く取ってよ」
「あっはい」
あっはい、って……ヒエラルキー低いなぁ自分。
「食堂にお茶を取りに行ったら滝夜叉丸がいたの」
「あっははっ!こないだあの人と喧嘩した時もそうだったけどトモミちゃん呼び捨てにしてるよね」
髪型が被ってるだなんて理由で殺意むき出しの攻撃を仕掛けていたのを思い出して口角があがる。先輩も大変だなぁとは思いつつトモミちゃんの顔を殴った恨みは私がしっかり晴れさせてもらったのだけれど。
「四年生の忍たまと対等に渡り合うなんて流石空手の実力者」
「だって素質があるんだから努力すれば上手くなるわよ」
「そうかなー」
湯飲みを横に置くと暖かな湯気が空気の中へ躍りながら溶け込んでいく。見ていて心地よくなる景色だ。
「まぁ一緒にいる間は何かあったら私が守ってあげるわ。それが力のある人の役割だってシナ先生も仰っていたし」
「きゃートモミちゃんかっこいいーっ」
先程同様頬を膨らませ外へ放り出したままの私の右足を軽く小突いてきた。イテッ。
なんとなく体を投げ出し畳の上に転がるとトモミちゃんは前を向いたまま上品にお茶を啜っている。
「あーあ。私が男だったらトモミちゃんと結婚するのに」
空中へと放り投げた言葉に答えが返ってこないまま部屋は静かになり鹿威しが乾いた音をたてた。
「……何か言ってよ」
「そんなことあるわけないでしょ」
「だよねぇ」
トモミちゃんはひどい。
『私達が一緒にいる間』が永遠にあればいいのに。有り得ないと決めつけた永遠も、これだけは本当であれと願い目を閉じた。
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