「雷蔵~!」
「うわっ
!そんな高いところに登ったら危ないよ!」
「大丈夫~今降りるから~!」
初夏を表す青々とした葉の隙間から手を降る影はニィと笑いそして枝から足を離した。
足を、離した……?
「うわぁぁああ待って
~~!!!」
葉っぱをガサガサと鳴らしながら落ちてくる桃色の塊をなんとか受けとめ安堵の息を漏らす。
「ふぅ……間に合ってよかった」
「すごいよ雷蔵。悩まなかったね!」
「迷う要素ないだろう!」
こうやっていつも振り回されているのにそれを苦と思わないのは三郎に振り回されて続けていることからの慣れだろうか。
「おはようっ雷蔵!」
「うん、おはよう
」
今日も朝から元気をありがとう。
***
食堂で会えるとご飯が倍美味しくなると食券を揺らしながら笑っていた。
「私ね、雷蔵が好きなの。でも、好きになるほど他の、種々なことが嫌になっちゃうの」
「例えば?」
うーんと例を探す彼女とランチを決めかねる僕と二人、食堂に人が少ないのをいいことに僕らは好きなだけ悩んでいる。
「まずは授業!座って授業を受けている間も雷蔵に会いたくてむずむずしちゃう!あとは本!雷蔵が本を読んでる間静かにしてなきゃいけないからもどかしいし、極めつけは三郎だね!あいつはもう駄目だ!協力な虫除けでも効かないんだよ!あいつのせいで私が雷蔵といられる時間半減してるんだよ!」
「ねぇ
、今日のランチAとBどちらにしよう」
「話聞いてるー!?」
聞いていたさ。でも、君が余りにもこそばゆいことをつらつらと言うものだから、僕が恥ずかしくなってしまうよ。
「ちなみに私Bランチだよ」
「じゃあ僕はAにしよう。おかず、半分こしようか」
「うん!」
を驚かそうと後ろで構えてた三郎が彼女からの思わぬカウンターを受けて泣いている。自業自得だ。
***
「雷蔵~」
実習の帰り、下級生は夢の中で微笑んでいる程に夜は更けている。
そんな時間に彼女の声が校庭まで響くものだから、驚くのも無理はないだろう。更に僕を驚かせたのは彼女が寝巻き姿に素足で廊下に立っていたからだ。忍たま長屋の。
「
っ!?」
三郎に荷物をぶん投げて彼女のもとへ駆け寄り、一瞬の躊躇いはあったものの、僕の装束を羽織らせた。
「雷蔵……私お風呂入った後なんだけど」
「だめだよ!仮にも女の子がこんな時間にこんな薄着で……」
ここまで捲し立てたところで顔に熱が集まりものが言えなくなってしまった。「仮にも、とは」という
や「見せつけてくれるねぇ雷蔵ぉ」などいう級友の声から逃げる今の僕は余程顔が赤いに違いない。
「雷蔵~~っ」
皆が眠る夜を全く気にしていない彼女の明るい声が背後から上がり、いまだに火照る頬に気を配りながら振り返ると、まるで光を浴びたようにはっきりと笑顔で手を振る
が見える。
「雷蔵っおかえりぃ!」
その声は相変わらず迷惑なボリュームだったんだけど
「
!ただいま!」
いつだって君が僕の中心だ
後日、木下先生及びその他の先生たちに呼び出されたのは言うまでもないかな。
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