一年は組の乱きりしんと一緒に学園長の庵前の掃除をしている時だった。
何でこのメンバーなんだとかそういう疑問は私が一番思ってる。
「そうじゃ、
」
「はい」
学園長に呼ばれたためほうきをしんべヱに預けお話を伺うと、"学級委員長委員会"としての仕事じゃ、と、仰った。
「ここから西に一里のところにある饅頭屋で紅白饅頭を買って来なさい」
「紅白饅頭……」
「饅頭屋さん!僕も行きたい!」
「しんべヱにはちと早いなぁ」
「……何個ずつ買ってきましょうか」
「さて、どちらが多いのぉ」
漏れるため息は隠し損ね、了解しましたと掃除を中断し部屋へ戻った。
学園長の言った場所に饅頭屋などない。
あるのは戦場だけで、それはつまり『旗をとってこい』ということ。
学級委員長委員会の仕事なら勘右衛門や三郎にやらせればいいのに。五年生が二人もいるんだから楽な委員会だと思って入ったのに見当違いもいいとこだ。
「ハァ……気が重い」
***
昼間の賑やかさは鳴りを潜め、夜の学級委員長室は月明かりに照らされるだけの静かなものだった。
「あれ勘右衛門……」
「おかえり」
暗闇にいた彼はこちらを見るなり人懐っこい笑顔で笑う。
「何でこんな時間にいるのさ」
「
が“おつかい”に行ったって聞いたからさ」
「わざわざ出迎えてくれなくても」
「
」
いつもより優しい声。
思わず振り返れば月明かりを受けた彼の顔は暖かい笑みを浮かべていた。
「おかえり」
疲れた体に彼の優しさが抗える訳がなく。広げられた腕の中に飛び込めば彼は易々と受け止めてくれた。ごめんね勘右衛門。砂も払っていない汚い装束のままだったよ。
「お疲れ様です」
「ありがとうございます……」
目をつむると先程の景色が思い出され僅かに身震いした。今殺されんとする武士と、目があった。彼は最期に何を思ったろう。見ず知らずの忍に見下ろされる景色が最期に見たものとはなんとも報われないな。
心がざわざわと落ち着かない。それを見透かしたように勘右衛門は優しく頭を撫でる。
「ごめんね、俺か三郎が行ければよかったんだけど」
「いいの、こんなの忍になればよくある任務だよ。───よくある任務だ」
自分の言葉を復唱して更に気が重くなる。
「……。今日ね、一年生の庄左ヱ門と彦四郎が俺のところに来て」
「……うん」
「宿題が難しかったみたいでさ、二人揃って教わりに来るなんて珍しいよね」
「そうだね……」
静かな学級委員長室には勘右衛門の落ち着いた声と、葉についた雫が池の中へ落ちる音だけ。
「俺も教えるのは得意じゃないから……と」
勘右衛門の声が止まってしまった気がした。なにか気になることでもあったのかな。せっかく話をしてくれているんだから聞かなきゃね……でも少しだけ、このままでもいいかな……
「……おやすみ、
」
君に休息を
「なるほど。それで一晩ここで二人っきりだったと」
「そうです」
「
が無防備にもお前に体を預け寝てしまったと」
「そうです……」
「それでもお前は、何もしなかったんだな」
「そう、です……!」
「勘右衛門……っ、お前、よく耐えたなぁ……!」
「もっと誉めてくれ三郎……っ」
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