何故だ……
「学園長先生が余ったお金で好きなもの買っていいって仰ってたよ」
何故なんだ……
「ほんとですかぁ?じゃあ僕はねぇ…うぅん迷う~~!」
何故……
「しんべヱよだれすごいよぉ~っ」
何故
「何故お前たちまで一緒なんだ!!」
「はにゃ~?」
遡ること数日前。
「仙蔵、今度の休日予定ある?」
学園長先生の庵の方から歩いてくる
に声をかけられ足を止めた。
「特に予定はないが……どうした?」
「いやぁ、学園長先生にお使いを頼まれたんだけど、一人でやり切れる自信がなくてね」
「お前がか?珍しいな」
眉を下げて笑う様さえも愛おしく見えるのだ。私は相当彼女に惚れ込んでいる。
「……というわけなんだけど、久々の逢引ということで、付き合ってはいただけませんか?」
「ん?あぁ、そんな及び腰にならずとも了承するに決まっているだろう」
「本当!?」
そんなに目を輝かせて、私が断るとでも思っていたのだろうか。
「ちゃんと話聞いてた?本当にいいの?」
実際のところ、お前に見惚れていて話を聞いていなかったのだが、そんなことを言ってはお前は怒るだろう。
何度も聞き返してくる問答を遮るように、次の休日正門で、と返した。
「何故って……私言ったでしょ?」
あぁ……こんなことならちゃんと話を聞いていればよかった……!まさかこいつらの使いの警護だとは!
「
先輩とお出かけできるのだけでも嬉しいのにぃ」
「立花仙蔵先輩まで一緒だなんて鬼に金棒です!」
無垢な笑顔をこちらに向けるな。黙って前だけ見て歩け。
それもすべて口にはせず、無意識にひきつる口をそのままに、そうだなとだけ返した。
「もしかして、私の話聞いてなかったの?」
「そうではない。そうではないのだが……」
こういった時咄嗟の言い訳ができないようでは、忍としては失格だな。
苦笑いを浮かべ、手つなぎで歩く三人を後ろから見守った。
***
「木炭と、カミツレ……あとなんだっけ?」
「はて。学園長先生から紙を預かっているだろう。それを見よう」
「うん」
うん、と言いながら、私の方を見つめている。なんだ。急にどうした。
「どうした?」
「え?いや、紙、見るんでしょ?」
「あぁ……」
「……」
「……」
………もしや
「私は、持っていないぞ」
「えっ私も持ってない」
「「!?」」
驚いてお互いを見合っても紙は出てくるわけもない。
「どうして、お前が預かっていたはずだろう!」
「えっ私!?さっき薬草を買う時に仙蔵に預けたじゃん、忘れたの?」
「人のせいにするな!あの後、確か……そうだ、喜三太としんべヱの二人に……」
確かにあの二人に渡した。渡してしまった。取り替えそうとあたりを見渡すがどこにも姿が見当たらない。
「あれ、しんべヱ君と喜三太君は?」
「いない……」
まずい、学園長先生にはあくまで「二人の警護」という依頼を受けているのに当の二人を見失ってしまった。
まったく、何故いつもあいつらはこうも問題を起こすんだ…!
「どうしよう、もし二人に何かあったら…」
「あぁ、何かあっては依頼は失敗だ。急いで探すぞ」
「……!?依頼なんかより、二人の無事を心配してよ!」
「おい、この状況でいちいち突っ掛ってくるな」
何が気に食わないのか、食い下がる
に、焦りと怒りがこみ上げる。
「第一、お前がこんな面倒なことに付き合わせなければ私は───」
「引き受けてくれたのに、何で今更そういうこと言うの!嫌ならあの時嫌って言ってよ!」
「それはあの二人がついてくるとは知らなかったからだ!」
「ほら!やっぱ話聞いてなかったんじゃん!」
「……っ」
言い合っているうちに
がボロボロと涙を流しだし、頭が回らない。
早くこの場を収め、あいつらを探しに行かねばならないのに。
「いい加減に───」
「「せんぱぁぁい!!!」」
声の方へ目を向けると、涙ぐんだ二人が勢いよくこちらへ走ってくる。
「きゃっ!」
を後ろから抱きしめるように飛び付いた二人に押され、
は私の腕の中に納まった。
「~~~っ!?」
「なっ、どうしたんだお前たち!何があった!」
「僕たち、先輩たちのデートの邪魔しないように二人でお使い終わらせようとおもったんです~っ」
「そしたら先輩たちがケンカしてる声が聞こえて…っ」
ケンカしないでくださいと泣くお前ら二人がケンカの原因だ。こいつらにはいつも迷惑をかけられている。が、
「えへへ…こうやって仙蔵といられるのすごく久々だねぇ」
まぁ、たまにはいい行いもするじゃないか。
腕の中で笑う
がくしゃりと笑ったその顔が可愛らしくて、一年二人への怒りなどどこかへ消え失せ抱きしめる腕を強めた。
お前には敵わない
「それで、先輩に言いたいことがあるんですけどぉ」
「ん?どうした」
「学園長からのお使いメモ、間違えてしんべヱの鼻紙にしちゃいましたぁ」
「………」
「仙蔵、焙烙火矢しまって」
戻る