んあああ許せねえ!またフラれた!この間までデートしてたあの子は最後には困った顔でごめんねって言ってきた!
『ごめんね、私じゃ敵わないや』
敵わないって何に!?それを聞いても困った顔のまま何も答えてはもらえなかった。
『困った顔もかわいい』そう眩いた時には『そんな言葉が欲しいんじゃないの』と言われる始末だ。
俺は言葉でも行動でも相手を好きだと伝えてきたつもりなんだけどなぁ……
「はぁ……」
「またフラれたの?って本当はかなりクズとか?」
「モラハラとかしてるんか?」
「多忙を理由に放っておいたのでは?」
「言いたい放題か女子ども」
机に突っ伏していると頭上から女子たちの言葉の槍がまーゲシゲシ突き剌さる。今の俺傷心中よ?
「1度や2度ならまだしも。ねぇ」
「そうそう。中学の時からそんな感じなの?」
「馬鹿野郎そんなわけあるか。俺は今も昔もずっと一途だし、相手の事を思いやってるよ」
だからこそショックなんじゃないか。皆、具体的に俺の嫌なとこを言って怒ったり罵ってくれればいいのに、なんとも呆れたというか諦めた顔をして去っていくんだ。改善点を教えてくれればその子のために直す自信はあるくらい、彼女たちの事は好きだし、大切にしてたはずだ。
「残念だったな」
「お前……本当にそう思ってる?」
項垂れる俺の前の席に座ってきた心操は声でわかる通りの無表情だ。体育祭以降女子からの応援の声に事欠かないこいつにとって、俺の周りの小さな恋など鼻くそみたいなもんなんだろ。いいなぁ顔がいい奴はよぉ!
「はいいやつだと思うよ。いつも周り気遣って動いてるし」
「うがあぁイケメンからの余裕の励ましが辛いわぁ!」
何が一番つらいってこのイケメンハイスペック有望ヒーローが俺と違い彼女を欲していないということ!!なんだろう。俺と言いA組の峰田といい、持たざる者ほど恋人を欲するこの残酷さは。
「、昼は食堂行くんだろ。仕方ないから奢るよ」
「え、まじで?ありがとう!そういう即物的な励ましなら大歓迎だッ」
「やっぱ笑ってた方がいいな。お前は」
「は?バカにしてる??」
「してない」
ふるふると首を横に振る心操に仕返しをすべく頰をぐっと摘まんでやる。イケメンの阿呆面がいやに面白い。
「ヘヘっ」
「おい離せ」
本気でない事はわかってるが、ムッとさせたいわけじゃないので俺も手を放し、心操は指の甲で抓まれたとこを少しさすってそのまま椅子に座り直した。
「ん?なんだい」
「別に。用がなきゃいちゃだめかな」
「ううん。心操がいいなら気にしないけど」
「そっか」
それだけ話して学校で宿題をやるタイプの俺は黙々と作業をして、心操は、何してるかよくわからんが俺のペンが止まるとヒントを与えてくるからぼんやりしてるんじゃないかな。
カーテン越しにも感じるくらい暖かい日差しが入ってくる窓辺の席はつい眠くなる。
ふと見上げた心操も同じなのか瞬きが随分ゆっくりだ。
「眠いな」
「あぁ……」
「今日の昼休み寝てよっかなぁ」
「食堂行かないのか?」
「うぅん…どーしよっかなぁ…」
さっきまであんなに苛立ってたのに、いつの間にか気分は落ち着いていた。日光のカかな?だとしたらすごい。
「おい、昼飯は食わないと体によくないぞ」
「うん……」
「なんか食わないと。持ってきてんのか?」
「母ちゃんうるせぇ……」
「俺はお前の母ちゃんじゃねぇ」
その後も何か色々言われた気がするが、心操の声を聞けば聞くほど意識が遠のいて、寝た。
なんとなく意識が浮上して、あれそういえば俺は今どこにいるんだと寝ぼけた頭で考えた瞬間慌てて目が覚めた。そうだ、俺、今、学校。口の端から垂れる涎を手の甲で拭って慌てて時計を見たが、時計より先に心操と目が合って驚いた。
「お」
「おわ……今何時」
「12時50分」
「良かった安心した。さすがに授業中に寝たりはしたくないし……いや何してんの」
一安心して机を見ると何故かおにぎりが規則正しく並んでいる。一番左にあるおにぎりにはまだ心操の手が触れている。現行犯だ。
「お前、飯食わずに寝たろ。せめて米は食え」
「わーありがとう優しいなぁ。でもさすがに今から3個は食べらんねぇよー」
「いや、の好みがわからないから色々買ってきたんだ」
「親切すぎん!?」
俺が急に大きい声出したことに驚いたのか、目をまん丸にしてちょっとだけ肩を揺らした姿はまるで猫みたいだ。たまらなくなって伸ばした俺の手は簡単に避けられるだろうが、そうはならなかったため柔らかなラベンダー色の髪を撫でまわした。
「まだ寝ぼけてるの?」
「うん?そうかも」
***
天下の雄英高校。俺のようなフツメンモブ個性でもフィルターがかかりそこそこお声がかかったりする。
俺はかわいい子が好きだ。別に顔に限った話じゃなくて、仕草とか、話し方とかサイズとかだったり。うちのクラスの女子はもう俺の中では「可愛いを超えてカッケェなので全然ときめきはしない」。素直にそう伝えたところ眉間に拳が飛んできた。ほ、褒めたのに……
「それで、オッケーしたの?」
「うん。向こうが付き合ってほしいって言うし、なんだか可愛らしかったから」
咋日学校帰りに一人買い物してた時、他校の女子高生から声をかけられた。まさかクラスメイトに見られてるとは思わなかったけど。
「や〜なんかって最低かも〜」
「えぇ、なんでだよ。向こうも『雄英生と付き合ってる』ってブランドが欲しいんだろうし、 俺だって浮気したりしないし誠意をもって付き合うよ」
変なことは言っていないはずなのに、なあにこの空気!女子は見るからに引いてるし、一部の男子もすっごい睨んでくる。
「買い物なら、俺も付き合うのに」
「あ~心操可哀そう~」
そんなに言う!?ってくらいの非難なんだけど、最初に切り出したのはそっちだからね。俺が自慢してるみたいになってるけどさ!
「あと実際、俺はこのクラスで一番庶民的だから取っ掛かりに丁度いいと思われてんだよ。見た目もザ・モブだし!」
「はあん??」
何を言っても空気は濁りっぱなしだし女子たちからは「哀そうな…」なんて同情の声が聞こえるし、助けを求めた心操も
「今度は、の良さを分かってもらえるといいな」
なんて困った顔してるし!それを見た俺は心操の困った顔も可愛いなんて思ってるし!!どうしたらいいの!
放っとかないでね僕のこと
元を辿れば、俺がフラれるようになったのって心操のせいじゃないかと思うんだよ!
「はその子の事好きなんだろ」
あんなに怖い顔して戦う癖に、俺と喋るときのふやふやした感じとか意外としょうもないとこで笑うとことか!
「好きだよ!心操のこと程じゃないけど!」
ねぇ俺また変な事言ってない!?
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