『なァ、生きてる?』
『……』
『お前あれだろ、最近名前が出てきた、あー、ホークス、だっけ?』
『……だったら』
『最近事務所立ち上げたんだろ?サイドキック呼べば?』
『…………』
『はぁ~~難儀だね』



「見捨てたら寝覚めが悪いから家に連れて帰って一晩泊めてやったのがファーストコンタクトだ」
「へぇ!」

興味津々と言った様子で俺に詰め寄るこいつは確か俺より一つ下だったと把握しているが、26にしては全然落ち着きないな。この間の雄英生のが大人っぽかったぞ。

「そんでそんで!?その後は!?」
「後もクソもあるか。俺が勤めてた会社に乗り込んできて引き抜きに来たんだよ」
「えっ、急になにこわ」
「お前の落差のが怖いわ」

別に話をはしょったり盛ったりしていない。どこから辿ってきたのか、家に置いてやった一週間後には俺の会社に来て人事に話をつけていたのだ。何でも俺の処理能力が必要だとか。そんなもんねぇよ。

「古株とは聞いてたけどそれからずっとここでサイドキックやってんのかァ」
「俺の個性が何に使えるって訳でもないからほんと辞めたかったんだけど過去に退職話を切り出した時はまぁ大変で。それにこのぬるま湯生活が嫌って訳じゃないからとウダウダしてたら古株になっただけ」
「へぇ」

別に話術があるわけじゃない俺の話の何が面白かったのか、目の前のこいつはニヤニヤと腹立つ顔で笑ってやがる。俺、口元に食べカスついてたかな。

「いやぁあのホークスさんがこれだけご執心とはなぁと思って」
「あいつは意外と執着心強いぞ。『まだ事務所が小さくて、専門の事務員を探す余裕ないんです』って何度も会社訪ねに来てたし」
「へぇ」

だからそのにやけ顔はなんなんだよ。そう言って詰め寄った時に事務所のドアが開き、見回りに出ていたホークスがなんとも面白くなさそうな顔で立っている。

「おかえり、ホークス」
「ただいま戻りました。何事もなかったですか?」
「ん?あぁ、見ての通り暇すぎて駄弁ってた 」

ツカツカ歩み寄ったホークスがご自慢の羽を俺と後輩の間に立てる。サボるなという事だろうか、後輩が笑いながら叫ぶという器用な声をだしそのまま一枚の羽に首元引っ張られる形で退出した。

「あいつの給料減らししといてください」
「今月分の減額報告は締め切ったし、お前相手だと全員減額しなくちゃだなぁ」
「むぅ……」
「ははっ!そんな子供みたいな顔すんなよ!」

物珍しい拗ねた顔が見られてつい愉快になった。お前の実力と俺の会計手腕なら減額しなくたってやっていけるよと言いながらいい位置にあった頭をぐしゃぐしゃ掻き回すと、さっきよりも顔を歪ませてまた「むぅ」と鳴いた。やっべ、年上からとは言え実力が下の男に頭を撫でられるのはプライドが許さなかったらしい。

「あー!そういえば今朝のニュース!エンデヴァーがまた大物あげたらしいじゃないか!あれ俺の実家の近くでさ!いやぁ助かったよ!なんでもプライベートだったみたいでさ!シフト上休日でもヒーローに休みはないから困るよな!遊びにも行けねぇよ!ホークスもあまり気張りすぎるなよ!」

前の会社見たく、課長の機嫌損ねたら即クビ!……みたいな事にはならないだろうが、それでもわざわざ会社のトップの株を下げたいわけじゃない。両手を宙に浮かせ身ぶり手振りで話続ける間に下を向いていたホークスも徐々に顔をあげた。

「ふ……俺が常に気を張って頑張ってるように見えます?」
「えぇ?」
「いつも程々に力抜いてるじゃないですか」
「そうかぁ?お前は頑張ってるだろ」

ゴーグルのせいではっきりとは見えないが、ホークスの片眉が動いた気がする。

「お前の背中にある綺麗な羽一枚一枚が人々の平和のためにいつも頑張ってる事くらい俺達は知ってるしなァ」

日常会話の延長、あまりに当たり前の事しか言えなかったから腹を立てたのだろうか。俺の言葉になんの反応も示さず部屋を出ていってしまった。

「ホークス?」

後を追うように閉じたドアに手をかけ廊下を見るも、早すぎる男はもうどこかへ行ってしまっていた。





「お前みたいな男をさァ、世の女性はタラシと呼ぶんだよなぁ」
「ん?どうでもいいけどお前、なんで壁に張り付けられてんだ?」
「おまえのせいだよ」



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