バタバタバタッ!
授業も終わり、寮に戻る1-Aの耳に慌ただしい音が飛び込んできたのはそんな放課後、珍しく開かれた校門の向こうからだった。
「カツキ~~!」
「はっ!?」
学ランを身に纏い、袈裟懸けしたエナメルをバコバコと上下に振り回しながら笑顔でこちらに駆け寄ってくる少年は、鳴き声のようにカツキと騒いでこちらへ向かってくる。
「カツキって……お前の事だよな?」
誰も呼ばない名前だが、それは間違いなく白目を向いて体を震わせている爆豪のものだ。切島が爆豪の顔を覗くより先に声を上げたのは爆豪の横にいた緑谷だった。
「君!ダメだ!」
「チィ……!」
その声を合図にするように両手を爆破させ一気に校門の向こうへ飛び出し、そのまま少年もろとも吹っ飛ばした。
「あ!あいつ!」
突然襲われた少年の身を案じ駆け寄った上鳴の耳に入ってきたのはなんとも軽快な笑い声だった。
「あっはっは!そうだった!部外者が入ったらブザーが鳴っちゃうんだっけ!?」
「何しに来やがったテメェ!」
「お前に会いに来たんだよカツキ~っ」
「気色の悪ィ声出すんじゃねぇッ!」
馬乗りになって怒鳴り顔面爆破を繰り返す爆豪の下で、少年は髪一つ乱れぬ綺麗な顔のまま嬉しそうに声を出して笑っていた。
「……な、何だァ?」
呆気に取られるクラスメイトたちを一歩後ろから眺め、緑谷は何も言わず苦笑いを浮かべた。
***
「会いたくなって会いに行ったら偶然会えるなんてすごくない??なぁカツキ!」
「黙れ」
「なぁイズク!」
「そうだねく──」
「どーでもいい話してんじゃねェぞてめェ!」
相変わらずだなぁ。
爆豪の死角に座る緑谷は先程から崩せない苦笑いを浮かべて、早く説明しろ、と言わんばかりのクラスメイトに視線を向ける。
「こちら君。僕とかっちゃんの幼馴染……というか、二つ上のお兄ちゃんでよく遊んでもらってたんだ」
「違ェ、こいつが絡んできたから相手してやってただけだ」
「ハッハッ!逆だろ~!お前がよく俺をサンドバッグ代わりに遊んできたんじゃないかぁ!」
「うるっせぇ死ね」
パシパシとタンクトップ姿の爆豪の肩を叩く彼が、何故雄英の学生寮に入れるのか。
単刀直入に聞いた蛙吹に困り笑いを浮かべながら学生証を取り出した。
「まぁそんなわけでさ、ここの先生から許可が降りたわけよ」
「士傑の、三年……!?」
「すげぇ!何でもっと早く言ってくれなかったんスか!」
「別にすごかないよぉ。『東の雄英、西の士傑』なんて言うけど、知名度と倍率で言えばここのが余程すごいんだから」
謙遜するを囲みわいのわいの盛り上がるクラスメイトの間に割って入り、またしてもの顔面を容赦なく爆破させた。
「爆豪!」
「寮内で個性使うなよ!」
「関係ねェ」
「もー、他の子に当たったらどうするんだ」
爆煙の中から出てきたはやはり髪一つ乱れず、何の被害も受けていないあっけらかんとした様子で目の前に伸びた手に触る。
「触んなッ!」
掴まれた手でまた爆破を起こすも先程と変わらない。これに驚くのは当人と幼馴染の二人以外であるから、きっとこれが彼の“個性”なのだろう。
「簡単に言うと“吸収”。受けた衝撃を体内に溜め込んで、数倍にして返すんだ」
「受けたときの痛みはないのか」
敬語を知らない常闇の質問にも気を悪くした様子もなく否と返した。
「多少は感じるけど、本来の5分の1程だから、大したことないよ」
「あ、あの!それで、君はどうして雄英へ?」
また輪の中から外れわなわな震える幼馴染を見かねた緑谷が話を戻し、ハッとしたように場の空気が戻った。
「そうだった、悪いなイズク!俺はカツキに会いに来たんだよ」
真っ直ぐに見つめられた先、ツンツンとした頭をさらに尖らせてボンッと不思議な音がした。
何の音だ?と首を傾げる周囲のことなどまるで無視して爆豪は「死ねッ!」と叫びをあげる。
「冷たいなカツキ……昔みたくお喋りもできないなんて……」
演技でもなく、本当に悲しそうに眉を下げる姿がどうにも二個上とは思えない。学園に来たときから同級生だと思われていたくらいだ。
「何ッで今更俺んとこ来やがんだよ!」
「なんでって、お前なら遠慮なく俺を襲ってくれるだろ?」
「ハァ!?」
キレ続ける爆豪の血管を心配する切島を他所にはいまだ楽しそうに笑うだけだ。
「雄英はどうか知らないけど、士傑の三年はインターンとは名ばかりの実践があるんだよね。給料がでないだけでやることはプロヒーローと全く同じもの」
「それなら前記事を読んだよ!関西方面では人手不足解消のため学生を起用するって……」
「そうだ。見聞が広いのはいいことだぞ~イズク~」
優しく目を細めて頭を撫でるその手は昔と変わらない、大きくて暖かかった。懐かしさと、みんなの前で頭を撫でられる恥ずかしさから小さく笑うと、今日一番の爆破がの後頭部に直撃し、緑谷は思わず肩を竦めた。
「テメェ本当に何しに来たんじゃボケェ……」
「あ~それそれ!そういうのもっと頂戴!」
やってみろッ!
からから笑ったはその後何度も爆撃を受けて、爆豪が相澤にウルセェと部屋に戻されるまで続いた。
後にが言った
「カツキ、俺のこと嫌いらしくて容赦なく攻撃してくれるんだぁ」
という言葉に愛想笑いを浮かべた緑谷の心中など、本人は知るよしもない。
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