あいつ/ゾロ
「ゾロが風邪?ウソウソ。そんなの引くわけねぇって。よく言うだろ?馬鹿は風邪ひかないって───アダッ!」


   ***

「えぇ?結局ゾロの風邪ってマジだったの?」
「だからそう言ってるだろ!」

人の顔面にダンベル投げてくるような奴を病人と呼ぶとは思えないが俺は良い海賊なので船医の言葉には従うぞ。

「さっき診た様子で薬を煎じるんだけどいくつか薬草が足りないんだ」

ピョコピョコ動き回る船医からの嫌な予感を察知したがチョッパーの上目遣いに勝てるわけもなく、フランキーが嬉々としてよこした鮫型潜水艦に乗り込んでエターナルポースの指す島へ降り立つ。一時間くらい揺られただろうか、腰痛い。

「ええと……花弁の多い赤い花をつけてて…………クソ、採取してから6時間しか持たねぇのかよ!どれだけ取っても売れねえじゃん!」

ゾロと言えばここ数日まともに顔を合わせてないあいつは鍛練で俺はナミ監視のもといつかのために資金を投資信託にいれるべく口座の手続きをしてたんだっけ。

「まぁいいですけど~??別に俺らそういうんじゃないし?気にしてませんけど~??」

森の奥へ奥へと歩を進め視界を遮る鬱陶しい枝を切り落としつつ進む。八つ当たり?いいえ探索です。
ようやく見つけた頃には空の色が橙色に変わりつつあって、だからこそ花は毒々しいくらい赤く目立っていた。


   ***

「という俺の苦労話を聞かせて恩に着せたいから起こしていいか?」
「だめに決まってるだろ!やっと寝たんだから!」

薬研を回す手は動かしながらゾロへちょっかいかけようとする俺の説教もこなすんだからうちの船医は本当にすごいよなぁーかゆかゆ。

「それにしても六時間は短すぎるよな。俺間に合ってたのか?かゆかゆ」
「あぁ。まだ花弁から露が搾れる。十分だよっありがとなっ」
「どういたしまして。あぁかゆかゆ」
「さっきから何言ってるん───わぁぁあ!?!?!?」
「どうしたチョッパー、ゾロが起きるぞかゆかゆ」
お前!手がかぶれてるぞ!」
「えぇ?」

蹄の指すのにつられずっとバリバリ掻いていた俺の右手を見るとあら大変。赤くかぶれた手を好き放題引っ掻くもんだから切り傷までこさえて、つまり腕がとても汚い。

「あぁあ……」
「待ってろ!今薬を───!」
「いいって後で。それよりこの花。そろそろ時間切れ何じゃないか?効能も6時間しか持たないって」
「後はそれ飲ませるだけだからがやっててくれ!いいか?起こさないように、少量ずつ口に流し込むんだ!」
「え、えぇ……」

言い出したら聞かない医者はそれだけ言うとまた自分の城へ戻ってしまう。この薬を?ゾロの口に? 少しずつ?

「…………口移しのが早い」
「ばか言ってんじゃねぇ」
「起きてたのか。狸寝入りとかタチ悪ィぞ」
「お前の間抜け声が五月蠅くて寝られねェ」

悪態をつく元気はあるようだが、ベッドから半身を起こそうとする手つきが気だるげだ。無理矢理押し付ければ特に抵抗もなくバスンと倒れこんだ。

「起きたんなら自分で薬飲めるよな。サンジにストローくれるよう頼んでくイッデェ!?!?」

立ち上がろうとした瞬間に引っ張られる右手!!ただでさえ痛痒いのになんでそんな事を!!!

「…………悪かったな」
「ッンとだよ!よく見てから掴みやがれッ!」
「その腕、俺のためにやったって?」
「…………自惚れんな。チョッパー様に頼まれたからだよ」
「あぁそうかい」

俺が腰を下ろしたのを見計らい腕を掴んでいた手は添えられるだけになって、しかしそこから離されることはなく、いつもよりずっと熱いゾロの温度が俺の右手を伝ってくる。風邪で、メンタルやられるなんてことがこの剣豪にも通ずるとはなァ。

「いいのかよ。チョッパー戻ってくるぜ」
「お前が逃げねぇようにしてるだけだ」
「あっそ」

チョッパーなら誤魔化せるだろうと高を括っていた俺たちはまさかの料理を運んできたサンジの来訪に慌てて互いの手を振りほどき流れでぶん殴るなどをしていたため、サンジとチョッパーによって沈められるのだった。
なんで……俺まで…………
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