おれ/クザン
「おーおー、海軍准将様がお見舞いに来てくれるなんて、同期ってのは素晴らしいなぁ」
「今はもう中将だよ」
「マジでか。すげぇ出世スピードだな」
「そんだけ軽口を叩く余裕があるなら安心したよ」
「まぁな、体調を崩し慣れるとこのダルさもなんてことなくなるんだ」

折角海軍に入れて、折角あのクザンとも親しくなれたのに。
どうやら俺の体には人よりも白血球というものが少なく、おかげで食作用も抗体反応も人より少ないためすぐに体調を崩してしまうのだ。役立たず海兵め。

「あまり強がるなって。今37.8もあるよ、お前」
「くそぉ、体に巻き付いた医療器具が恨めしい……」
「昼間からこの体温って、医者呼ばなくていいわけ?」
「昼間から中将がここにいていいのかよ」

まともに返事をしない俺にご立腹なのだろう。部屋が少しだけひんやりとしたのを感じてクザン、と呼び掛ける。

「……おれはさァ、真面目に言ってんのよ」
「うん」
「やっぱりあん時、お前がアラバスタの視察に行けば良かったでしょう」
「嫌だよ。俺暑いの嫌いなんだ。サクラ王国の視察は譲れないね」
「アラバスタに、小さな海賊が根城を作ってたよ」
「あぁ~手柄を取られたのは悔しいな」
「知ってたんだろ」
「なんで俺が出世頭のお前に手を貸してやるんだ。たまたまだよ」

人と喋るのは体力を使う。布団の中に籠った熱に耐えきれず、捲ってしまおうとしたタイミングで機器がわずかに点滅した。

「……38.4」
「あー……どうりで」

しんどいと思った。そう続かなかったのはやたら深刻そうに数字を睨むクザンの表情を盗み見てしまったからか。
全く。本当にただの熱風邪なんだ。なんの変哲もない普通の体調不良。むしろ頻繁すぎてまたかお前と言われることばかりで見舞いになんて誰も来やしないのに。お前だけだよクザン。

「お前がガミガミ責めるから熱が上がった」
「……すまん」
「冗談だから。手を貸してくれ」

大人しく差し出された大きな左手を額に乗せる。能力のせいだろう。ひんやりとした手が体の熱を奪ってくれるようで気持ちいい。これが手放せるようになるまで俺はクザンに「もう来るな」とは言えないだろう。それくらいに素晴らしいアイスノンだ。

「お前、俺がくたばってる時は優しいよなァ」

そうじゃなきゃアンタ、人に甘えたりしないでしょ。だなんて。熱にやられた耳と脳が都合のいい言葉を作り上げたに違いない。
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