あいつ/パウリー
折角もぎ取った有給を無駄にしてしまった事?当然怒ってる。怒るに決まってんだろ!この為に俺がどれだけポイント稼いで真面目に働いてきたと思ってんだ!
だがそれ以上に俺が怒ってんのはお前にだ!パウリー!

「……分かったから、そんな、大声出さなくても聞こえてる……」
「はぁ!?テメェの声は小さくて聞こえねぇよッ!」

横にいるキウイとモズがまぁまぁわいなわいなと俺を宥めてくれてなければ今頃お前は耳にイカができるまで俺から延々と小言を聞かされていたに違いない。え?イカじゃなくてタコ?知らんがな。

「聞いたぞ、アイスバーグさんには無理やり休みを取らせたらしいなァ?」
「あぁ……」
「まーそれはいいだろ。部下に裏切られ体に穴開けられそれでも代役のいない市長やらなにやらに追われて寝る間もないくらいだからな」

うんうん。二人もそう思うよね?勿論働きっぱなしなのはアイスバーグさんだけじゃない。ガレーラカンパニーを建て直す為あちこちの職人が一心不乱に働いているのだ。お前もな!パウリー!

「体に穴開けられてんのはテメェも同じだろうが!その後麦わらたちと共に政府へ乗り込むくらい動けたとしても!穴は塞がんないの!怪我人なんだよおわかり!?」
「うぅ……うるせぇ……」
「そりゃあご無体続きの生活が続けばいつかはガタが来るの!むしろ熱がでただけで済んで良かったよ!」
「でも大の大人が39度って」
「なかなか重症だわいな」
「そ!だから二人は大至急医者を呼んできて。後は俺がやっとくから」

軽い足取りで去っていく二人を見送って、俺はふうと息を吐いた。さてさて、これからやるべきことは山ほどある。
まずは大失敗のロープアクションをほどいて回り、ピープリーにパウリーの代理を頼まなくては。

「その前にお前を部屋に運ぶぞ」
「ここでいい……」
「困るよ。皆の休憩所に風邪菌の温床がいたんじゃ他の奴等が休まらん」
「ぐぅ……」

リアルにぐうの音をあげるやつ初めて見た。
まぁとにかく歩けないのなら抱き抱えて部屋まで運んでやると言ったのに、強く断られた。なんでも男同士とはいえそれだけ密着するのははれんちなんだと。そんなこと意識しちゃう方がよほどはれんちだと思う。
かといって『俺は全然気にしないけど』と言ったらきっと傷付けてしまうので言葉を飲み込み肩を貸してやる。これすら苦い顔するのだからこいつのガードは相当固いのだろう。キスまで持ち込む頃にはお互いしわくちゃのジジイになってそう。ジジィってセックスできんのかなぁ?


「どうした」
「あー…… 悪い。折角のお前の有給を、もう半日近く無駄にしちまった」
「あぁ、それならもういいよ。こういう休日も格別だろ?」

そう、普段はパーソナルスペースの広いパウリーがこんなに近くにいるのだから格別だ。休みが潰れるの全然あり。
確かにパウリーと一緒にヤガラレースに行く予定がおじゃんになったのは少々惜しいけれど。

「今度、埋め合わせする」
「埋め合わせより倒れる前に休息をとる癖をつけてくれよ」

額のゴーグルを外してやり流れるように肩を押せば簡単にベッドイン。そういえば最近ソファーに転がってるとこしか見てないから、ろくに睡眠も取ってなかったんだろう。しぶとく残ってた社畜魂も何回か布団を叩いてやればあっさり陥落し規則正しい寝息が響く。

「さ、ゆっくり寝ろよパウリー」

映像電伝虫を持ってくれば良かったのだが無いのだから仕方ない。無防備に晒された寝顔を十二分に堪能して静かに退室。さっさとポンコツロープアクションの被害者となったザンバイの手助けに行かねぇと。

「おー!!パウリーの看病お疲れさん!!!」
「静かにしろよタイルストン」
「すまん!それにしても甲斐甲斐しいな!!」
「まぁね。将来のお嫁さんのためならこれくらいどうってことねぇよ」

俺の言葉にタイルストンはあんぐりと口を開け静かになった。
そうそう。病人の側ではお静かに。
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